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企業経営において資金調達は重要な課題であり、短期借入金はその手段の一つとして多くの中小企業や個人事業主に活用されています。
決算書でよく目にする、短期借入金と長期借入金の違いや正しい仕訳方法を知ることで、会計処理の精度が高まり、財務状況の把握が容易になるでしょう。今回は、資金調達の選択肢を広げるためにも、短期借入金の基本知識について解説します。
短期借入金は企業の財務諸表において重要な役割を果たしており、流動負債として計上される負債の一種です。金融機関や関連会社からの資金調達において、返済期間が短いという特性から、運転資金の確保に適した借入方法として広く利用されています。
短期借入金とは、返済期限が1年以内に到来する借入金のことです。決算日の翌日を起算日として1年以内に返済する負債であり、貸借対照表では流動負債の区分に計上されます。
金融機関からの融資だけでなく、関連会社からの借入金や役員個人から借りた金銭なども、返済期限が1年以内であれば短期借入金として扱われるのです。
流動負債に分類されることから、企業の短期的な支払能力を示す指標である流動比率の計算にも影響を与えます。経営分析において流動資産と流動負債のバランスは重要であり、短期借入金の金額が多すぎると、財務健全性に疑問符が付く場合があり注意が必要です。
短期借入金には複数の形態があり、代表的なものとして手形借入金、当座借越、証書貸付などが挙げられます。
手形借入金は、銀行を受取人とした約束手形を振り出すことによって融資を受ける形式です。手形の満期日が返済日となり、通常3か月から6か月程度の期間設定で利用されることが多く見られます。
当座借越は、あらかじめ銀行と当座貸越契約を締結しておくことで、預金残高を超えた支払いができる仕組みです。企業の資金需要に柔軟に対応できる利点がありますが、借入限度額を守ることが重要となります。
証書貸付は金銭消費貸借契約書を交わして融資を受ける方法で、毎月一定額を返済していく分割返済方式が一般的です。返済計画が立てやすく計画的な資金繰りが可能です。
短期借入金は借入期間が短く、金融機関にとって貸付債権が未回収となるリスクが低いため、金利も低く借入がしやすい特徴があります。長期借入金と比較すると審査のハードルが低い傾向にあるでしょう。
一方で返済期間が短い分、1回あたりの返済が高額になりがちで、売掛金の回収が困難になれば資金繰りが厳しくなるリスクがあります。短期間で返済する必要があるため、計画的な資金管理が必要です。
次に短期借入金と長期借入金の違いについても見ていきましょう。具体的な解説の前に、以下にて表にまとめてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
項目 | 短期借入金 | 長期借入金 |
---|---|---|
概要 | 決算日の翌日から1年以内に返済期日が到来する借入金 | 決算日の翌日から1年を超えて返済期日が到来する借入金 |
資金の用途 | 主に運転資金(仕入、経費の支払いなど) | 主に設備投資資金(機械、建物などの購入) |
返済期間 | 1年以内 | 1年超 |
金利 | 一般的に長期借入金よりも低い | 一般的に短期借入金よりも高い |
担保 | 不要な場合が多い | 必要な場合が多い |
財務諸表での区分 | 流動負債 | 固定負債 |
メリット | 比較的借りやすい、金利が低い | 長期間の資金調達が可能、返済負担が分散される |
デメリット | 短期間での返済が必要、資金繰りに影響が出やすい | 金利が高い、審査が厳しい |
短期借入金は返済期限が1年以内である一方、長期借入金は返済期限が1年を超え、場合によっては10年以上の返済期間を持つこともあります。返済期間の違いは資金調達の目的や企業の資金繰り計画に大きく影響するでしょう。
長期借入金でも残り返済期限が1年以下になると、貸借対照表では短期借入金として扱われます。財務会計においてこの原則は「ワンイヤールール」と呼ばれ、企業の短期的な支払能力を正確に表示するために適用されているのです。
期間区分に応じた適切な会計処理を行うことで、企業の資金繰り状況や財務体質が第三者からも正確に把握できるようになり、金融機関や取引先の信頼獲得にもつながります。
短期借入金は借入期間が短いため、金融機関にとってリスクが低く、長期借入金と比べて金利が低い傾向にあります。金利負担の軽減は企業収益にプラスとなる要素です。
短期借入金は運転資金を想定しているため、売掛金の範囲内であれば赤字でも融資を受けられることがあります。金融機関は返済財源となる売掛金の実在性や回収可能性を重視して審査を行うためです。
長期借入金は返済期間が長いため金利が高くなりがちですが、1回あたりの返済額は少なくなる点はメリットです。月々の資金負担が抑えられるため、計画的な設備投資が可能になるでしょう。
短期借入金は主に一時的な資金調達や運転資金の確保など、短期的な資金需要に対応するために利用されます。仕入代金の支払いや給与支払いなど、日常的な事業活動に必要な資金の調達手段として適しているでしょう。
長期借入金は設備投資や事業拡大など、長期的な視点での投資に対する資金調達に適しています。収益化までに時間がかかる投資案件では、返済期間の長い借入金が選択されることが一般的です。
短期借入金の会計処理を正確に行うことは、企業の財務状態を適切に表示するために重要です。借入時、返済時、そして決算時の振替処理など、状況に応じた適切な仕訳が求められます。基本的な仕訳パターンを押さえておくことで、経理処理の精度向上につながります。
銀行から短期借入金を受け取った場合、借方に「預金」、貸方に「短期借入金」と記入しましょう。これによって現金の増加と同時に負債の発生が記録されます。
例えば、銀行から50万円の融資(1年以内に返済予定)を受けた場合、借方に「預金 500,000円」、貸方に「短期借入金 500,000円」と仕訳しましょう。
この処理により貸借対照表上で預金残高と短期借入金残高がそれぞれ50万円増加します。
長期借入金と短期借入金が混在する場合は、1年以内に返済する分を短期借入金、1年超の分を長期借入金として区分して仕訳しましょう。例えば3年返済の300万円借入の場合、初年度分100万円は短期借入金、残り200万円は長期借入金として処理します。
借入時の仕訳は比較的単純ですが、借入条件を正確に把握し、短期・長期の区分を適切に行うことが重要です。借入条件を示す契約書や返済予定表などの書類は、会計処理の根拠資料として保管しておくことが望ましいでしょう。
借入金を返済する際は、借方に「短期借入金」、貸方に「預金」と記入し、利息がある場合は借方に「支払利息」も追加してください。これにより負債の減少と現金の減少、そして費用の発生が記録されます。
例えば、短期借入金100万円と利息1万円を返済した場合、借方に「短期借入金 100万円」「支払利息 1万円」、貸方に「普通預金 101万円」と仕訳します。
元本と利息を明確に区分して処理することがポイントです。
借入金の利息は非課税であり、支払利息は営業外費用の区分の勘定科目として処理します。利息の支払いは損益計算書上で企業の収益性に影響を与える要素となるため、適切に計上するよう心がけてください。
決算時に長期借入金の返済期限が1年以内になった場合、長期借入金から短期借入金に振り替える仕訳を行います。これによって貸借対照表上での負債の区分表示が適切になります。
例えば、来年度に返済予定の1,200万円を振り替える場合、借方に「長期借入金 1,200万円」、貸方に「短期借入金 1,200万円」と仕訳しましょう。
この処理により固定負債から流動負債への振替が行われるのです。
この振替仕訳により、貸借対照表上で1年以内に返済すべき負債が明確になり、企業の短期的な支払能力を適切に表示できます。流動比率など財務指標の正確性を確保するためにも重要な会計処理です。
短期借入金は返済期限が1年以内の借入金であり、運転資金など短期的な資金需要に対応するために活用されます。長期借入金と比べて金利が低く借入がしやすい利点がありますが、返済期間が短いため計画的な資金管理が求められます。
会計処理においては、借入時・返済時の基本的な仕訳に加え、決算時には長期借入金からの振替処理が必要です。企業の資金調達戦略では、資金使途に応じた最適な借入期間の選択が重要であり、短期・長期のバランスを考慮した借入計画の立案が健全性の維持につながるでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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