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中小企業や個人事業主が経営を続ける中で、財務状況が悪化し債務超過になるケースがあります。債務超過は企業経営における危険信号であり、早期発見と適切な対応が必要です。今回は、債務超過の概念から解消法まで、経営者が知っておくべき基本知識を解説します。
企業経営において「債務超過」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。債務超過とはどういう状態か、詳しく解説しましょう。
債務超過は、企業の負債総額が資産総額を上回る状態を指します。具体的には貸借対照表上で純資産がマイナスとなり、企業が保有する資産を全て現金化しても、負債を完済できない状況です。
会計上では「債務超過=負債>資産」と表現でき、純資産(資産-負債)がマイナスになる財務状態です。純資産は株主資本や資本金、利益剰余金などから構成され、企業の自己資本を表します。
債務超過になると銀行からの新規融資が困難になるだけでなく、取引先からの信用も低下します。長期間にわたって解消されない場合、企業の存続が危ぶまれる事態に発展するかもしれません。
債務超過状態が継続すると、金融機関からの資金調達はほぼ不可能です。銀行は融資審査で貸借対照表をチェックし、債務超過企業への新規融資には極めて慎重になるためです。
また、仕入先や得意先など取引先企業からの信用低下も大きな問題といえるでしょう。信用調査会社の格付けが下がり、取引条件が厳しくなるケースも少なくありません。最悪の場合、倒産に至るリスクも。
債務超過に陥る原因として、赤字経営の長期化が挙げられます。毎期の赤字は利益剰余金を減少させ、自己資本を毀損します。資産価値の下落による評価損や多額の特別損失計上、過大な設備投資による負債増加なども主要因となるでしょう。
債務超過かどうかを判断するには、貸借対照表を確認します。計算式は単純で「資産合計-負債合計」の値を見れば判断可能です。
資産合計が1億円、負債合計が1億2千万円の場合、純資産は-2千万円となり、債務超過の状態と判定されます。逆に資産合計が負債合計を上回れば、健全な財務状態といえるでしょう。
また、決算書上の数値だけでなく、実態貸借対照表を作成して現状を正確に把握することも重要です。回収見込みのない売掛金や実際には価値が低下している固定資産など、会計上は資産計上されていても実質的な価値が乏しいものを除外して判断します。
経営者自身が定期的に財務状況を確認し、債務超過のリスクを早期に察知する習慣を持つことが大切です。
財務状況の悪化を示す言葉として「債務超過」「赤字」「資金ショート」がありますが、これらは異なる概念です。詳しく解説しましょう。
項目 | 債務超過 | 赤字 | 資金ショート |
---|---|---|---|
意味 | 会社の資産よりも負債が多い状態 | 損益計算書上で費用が収益を上回っている状態 | 現金や預金など、すぐに使えるお金が不足する状態 |
対象 | 貸借対照表(バランスシート) | 損益計算書 | キャッシュフロー計算書、資金繰り表 |
焦点 | 財政状態(ストック) | 経営成績(フロー) | 現金収支 |
期間 | ある時点 | 一定期間 | ある時点、または一定期間 |
影響 | 存続の危機に繋がる可能性が高い | 経営悪化を示唆するが、すぐ倒産とは限らない | 倒産に直結する可能性が高い |
関係性 | 赤字が累積すると債務超過になることがある | 債務超過の原因の一つとなりうる | 赤字や債務超過が原因で起こることがある |
改善策 | 資産の売却、増資、債務免除など | 売上増加、コスト削減など | 資金調達、支払い猶予交渉など |
債務超過は貸借対照表における純資産のマイナス状態を指し、企業の財政状態に関する概念です。一方、赤字は損益計算書における当期純損益がマイナスとなる状態を指し、企業の経営成績に関する概念です。
両者の大きな違いは、債務超過が一時点での財務状態を表すのに対し、赤字は一定期間の経営成績を表すという点にあります。例えば、当期は黒字でも過去の累積赤字により債務超過になっているケースもあるのです。
赤字が継続すれば最終的に債務超過へと至る可能性が高まりますが、一時的な赤字だけでは必ずしも債務超過にはなりません。十分な自己資本があれば、短期的な赤字を吸収できるからです。
資金ショートとは、日々の営業活動に必要な現金などの運転資金が不足し、支払いが困難になる状態を指します。
給与や仕入代金など即時の支払いに対応できなくなり、事業継続が困難になるケースです。
対して債務超過は財務諸表上の状態を示すもので、直ちに資金繰りの問題に直結するわけではありません。資産と負債のバランスが崩れていても、当面の現金が確保できていれば事業活動は続けられます。
対照的に、貸借対照表上は健全でも、売上金の回収が遅れたり予想外の支出が発生したりすると資金ショートに陥る可能性が否めません。実務上は債務超過より資金ショートの方が緊急性が高く、即座に倒産につながるリスクがあるということです。
三者は異なる概念ながら密接に関連しています。赤字経営が続けば内部留保が減少し、自己資本が毀損され債務超過に近づきます。同時に、現金収入が減少することで資金ショートのリスクも高まるということです。
資金ショートを防ぐために借り入れを増やせば負債が増加し、結果的に債務超過に近づく可能性があります。また、債務超過状態では新規融資が困難になるため、資金ショートのリスクが高まるという悪循環に陥りやすくなるのです。
経営者は月次決算や資金繰り表を活用し、赤字・債務超過・資金ショートの兆候を早期に把握することが大切です。問題が表面化する前に対策を講じることで、企業の存続危機を回避できるかもしれません。
債務超過に陥ったからといって即座に倒産するわけではありません。適切な対策を講じれば、財務状態を改善し事業を継続できる可能性は十分にあります。ここでは実践的な解消方法について解説しましょう。
債務超過を解消する基本的な方法は、売上を増やして利益を出し、純資産を増加させることです。本業での収益力強化は債務超過解消の王道といえるでしょう。営業力強化やコスト削減により、黒字体質への転換を図ります。
また、増資による資本金の増加も効果的な方法です。経営者自身による追加出資や、親族・知人からの出資、第三者割当増資などが考えられます。中小企業では、経営者の個人資産を会社に投入するケースも少なくありません。
さらに、不要な資産の売却も選択肢の一つです。遊休不動産や使用頻度の低い設備などを売却して現金化し、負債の返済に充てれば、資産と負債のバランスが改善します。業務効率化の観点からも、保有資産の見直しは有効です。
経営改善計画を策定し、金融機関の協力を得ることも重要です。メインバンクを中心に返済条件の見直し交渉を行い、返済猶予や金利引き下げなどの金融支援を受けられるかもしれません。
また、債権者による債務免除も債務超過解消の選択肢となります。負債が減少すれば純資産が増加するため、債務超過の解消につながるでしょう。ただし、債権者に損失が生じるため、企業再生の見込みがなければ同意を得るのは難しいかもしれません。
増資や資産売却による解消は、一時的な効果にとどまる場合があります。根本的な収益力が改善されなければ、再び債務超過に陥るリスクが残ります。一時的な財務改善だけでなく、事業構造の見直しによる持続的な黒字体質の構築が不可欠です。
また、債務免除を実施する場合は、税務上の影響にも注意が必要です。
債務免除益は原則として課税対象となりますが、一定の条件下では非課税となる特例があります。専門家のアドバイスを受けながら進めましょう。
さらに、短期的な対応と中長期的な経営改善を並行して進めるのが重要です。財務指標の改善だけでなく、事業の選択と集中、組織体制の見直し、業務プロセスの効率化など、経営全般にわたる改革をすすめましょう。
債務超過は企業の負債が資産を上回る状態であり、放置すれば企業存続の危機へとつながる恐れがあります。赤字や資金ショートとは異なる概念ですが、相互に関連しており、総合的な財務管理が必要です。
解消方法としては、本業の収益力強化による黒字化、増資、資産売却、金融支援、債務免除などがあります。一時的な対策だけでなく、根本的な経営体質の改善が重要です。
債務超過の兆候が見られたら、早期に専門家に相談し、適切な対策を講じることをおすすめします。迅速な対応と抜本的な改革によって、企業を再生させる可能性が高まるでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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