事業資金の借り換えで資金繰りは改善できる?

事業資金の借り換えで資金繰りは改善できる?

中小企業や個人事業主が抱える経営課題として、資金繰りの問題は常に上位に挙げられます。借入金の返済負担が重く、事業拡大の機会を逃してしまうケースも少なくありません。今回は、事業資金の借り換えは、資金繰り改善できるのかについて解説します。

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事業資金の借り換えで資金繰りを改善できる?

事業資金の借り換えで資金繰りを改善できる?

事業資金の借り換えは、多くの経営者が検討する資金繰り改善の手段です。適切な条件で借り換えを行えば、月々の返済負担軽減や総返済額の減少など様々な恩恵を受けられる可能性があるでしょう。一方で、必ずしも全ての事業者に適した選択肢とは限らず、借り換えによって生じるコストやリスクも考慮が必要です。

事業資金の借り換えとは?

事業資金の借り換えとは、現在抱えている事業融資を新たな条件の融資に切り替える手法です。既存の借入金を一旦返済し、別の金融機関や同じ金融機関の異なる商品に借り直す仕組みとなっています。

借り換えの主な目的は、金利の引き下げや返済期間の延長によって返済負担を軽減することです。経営状況の改善や業績の安定により信用力が向上した場合、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。

借り換え先としては、都市銀行や地方銀行などの一般金融機関、信用金庫や信用組合、日本政策金融公庫、信用保証協会付き融資など多様な選択肢があります。

事業資金の借り換えのメリット、デメリット

事業資金の借り換えによる最大のメリットは金利負担の軽減です。創業期など信用力が低い時期に組んだ高金利の融資から、業績が安定した後により低金利の融資へ切り替えることで、返済総額を削減できる場合があります。

返済期間の延長により月々の返済額を減らせる点も大きなメリットです。毎月の返済負担が軽くなることで、日々の資金繰りに余裕が生まれ、事業拡大のための投資資金を確保しやすくなるでしょう。

一方、借り換えには手数料や保証料、場合によっては抵当権設定のための登記費用など各種コストが発生します。借り換えによる節約効果がコストを上回るか慎重に検討が必要です。

返済期間を延長すると毎月の返済額は減りますが、総返済額が増加する可能性もあります。短期的な資金繰り改善と、長期的な返済負担のバランスを考慮することが大切です。

事業資金の借り換えを行う際の注意点

借り換えを検討する際は、手数料や保証料、登記費用などの諸経費を含めたトータルコストを正確に把握することが重要です。表面上の金利だけでなく、諸費用を含めた実質的な負担を計算して借り換えの効果を判断しましょう。

例えば、複数の金融機関から見積もりを取り、最も条件の良い借り換え先を選ぶことが得策です。

金利だけでなく、返済期間や担保・保証人の要否、融資実行までのスピードなど様々な要素を比較検討しましょう。

事業資金の借り換えを行う際の審査のポイント

事業資金の借り換えを行う際の審査のポイント

借り換えを成功させるためには、金融機関の審査に通過することが不可欠。事前に審査のポイントを理解し、適切な準備を行うことで、審査通過の可能性を高めることができます。

審査に通るためのポイントは?

借り換え審査で重視されるのは、何よりも財務の健全性です。単年度の業績だけでなく、過去数年間の売上推移や利益率の安定性が評価されます。特に直近の決算内容が黒字であることが審査通過の大きな要素となります。

継続的な利益確保の見通しも重要なポイントです。一時的な好業績ではなく、安定した収益基盤を持つ事業かどうかが厳しくチェックされます。事業計画や受注状況など将来の収益性を示す材料を準備しておくと良いでしょう。

財務状況が審査に与える影響

借り換え審査では債務償還年数(年間の返済余力で借入金を返済するのに何年かかるか)が重視されます。一般的に3〜5年以内が望ましいとされ、それを超える場合は返済能力に疑問符がつきます。

売上に対する借入金の割合も審査の焦点です。

業種にもよりますが、年商の50%を超える借入金は「過剰債務」とみなされる傾向があり、借り換えが難しくなる場合があるでしょう。

純資産の状況も審査に影響します。債務超過(負債が資産を上回る状態)となっていると、借り換え審査はかなり厳しくなります。純資産がプラスであることや、自己資本比率が改善傾向にあることが望ましいでしょう。

返済状況と信用情報もポイント

金融機関は借り換え審査の際、信用情報機関(CIC、JICC、全銀協など)のデータをチェックします。過去の返済遅延や延滞の有無、借入件数など信用情報に問題があると、借り換え承認の可能性は大きく下がってしまうでしょう。

特に約定返済日の遅延は問題とみなされます。毎月の返済期日を守ることが、借り換え審査を有利に進めるための基本です。万が一返済が厳しい状況になった場合は、期日前に金融機関に相談することで、信用情報に傷がつかないよう注意してください。

事業資金の借り換えを検討したほうがいいケース

事業資金の借り換えを検討したほうがいいケース

事業資金の借り換えは全ての事業者に適しているわけではなく、特定の状況下において効果を発揮します。自社の状況を冷静に分析し、借り換えが本当に有効な選択肢かどうか見極めることが肝心です。

既存融資よりも有利な条件が提示された場合

金融市場の金利動向や自社の信用力向上により、既存融資より明らかに有利な条件が提示されたケースは借り換えの好機と言えます。年0.5%以上の金利差があれば、借り換えによる効果が期待できる場合が多いでしょう。

複数の金融機関から借り入れており、返済管理が煩雑になっている場合も借り換えの良い機会です。借入を一本化することで返済日の管理が容易になり、経理事務の効率化にもつながるでしょう。

また、金融機関からの評価が向上したタイミングも借り換えに適しています。創業期や業績不振時に組んだ高金利融資を、業績安定後により低金利の融資に借り換えることで、大きな節約効果が得られるでしょう。

資金繰りが厳しい場合

毎月の返済額が経営を圧迫しているケースでは、借り換えによる返済期間の延長で月々の負担を軽減できる可能性があります。返済総額は増える場合がありますが、当面の資金繰り改善を優先すべき状況もあるでしょう。

また、短期借入が多く、返済負担が集中している場合も借り換えが有効です。

短期融資を長期融資に借り換えることで、返済負担を長期間に分散させ、月々の返済額を減らすことができます。

将来的な収益改善は見込めるものの、一時的に資金繰りが厳しい状況では、借り換えによるつなぎ資金確保も選択肢となります。ただし、根本的な経営改善がなければ問題の先送りになるリスクも考慮した上で利用を検討してください。

事業拡大や新規投資を見据えている場合

事業拡大や設備投資の計画がある場合、借り換えと追加融資を組み合わせた資金調達が効果的です。既存借入の借り換えと同時に追加資金を調達することで、審査を一度で済ませられる利点もあります。

高金利融資を低金利に借り換えることで、生まれた返済余力を投資資金に回すという戦略も考えられます。返済負担が軽減された分を新規事業や設備更新などに充てることで、企業の成長にも大きな期待が持てるでしょう。

M&A(合併・買収)や事業承継を控えている場合も、借り換えによる財務体質の改善が重要です。負債構成の最適化や返済負担の軽減により、スムーズな事業承継やM&Aが実現できる可能性が高まるはずです。

まとめ

事業資金の借り換えは、適切な条件で実施すれば資金繰り改善に大きく貢献してくれます。金利負担の軽減や返済期間の見直しにより、月々の返済負担を減らし、事業拡大のための資金を確保できる可能性があるのです。

一方で、諸費用の発生や借り換え先との条件交渉など留意点も多いため、自社の財務状況や将来計画を踏まえた、慎重な判断が必要となります。借り換えを検討する際は、複数の金融機関から見積もりを取り、総合的に比較検討することを心がけてください。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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