負債比率とは?求め方、目安、改善方法について解説

負債比率とは?求め方、目安、改善方法について解説

中小企業の経営状況を客観的に把握するための財務指標は数多く存在しますが、その中でも負債比率は借入依存度を示す重要な指標です。銀行融資を検討する際や事業拡大を計画する段階で、現在の財務状態を正確に把握するためにも負債比率の理解は欠かせません。今回は、負債比率について詳しく解説します。

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負債比率とは?

負債比率とは?

負債比率は企業の財務健全性を測る上で重要な指標といわれますが、そもそもどのような指標なのでしょうか。

負債比率の概要

負債比率とは企業の自己資本に対する負債の割合を示す財務指標であり、企業がどれだけ他人資本(借入など)に依存しているかを表す数値です。

計算結果はパーセンテージで表され、数値が高いほど企業の財務リスクが増大する可能性を示します。

企業活動において資金調達は必要不可欠ですが、借入金などの負債に過度に頼ると、返済負担が重くなり経営を圧迫する恐れがあります。負債比率を定期的に確認することで、自社の財務状態の変化を早期に察知できるのがメリットです。

また、金融機関や投資家は、企業の安全性を判断する材料として負債比率を重視します。特に融資審査においては、過度に高い負債比率は返済能力への懸念材料となるため、業界平均値や過去の推移を踏まえた適正水準の維持が求められますので、しっかり確認しておきましょう。

負債比率の求め方

負債比率は「負債 ÷ 自己資本 × 100」という計算式で算出できます。

負債には流動負債と固定負債の両方を含み、返済義務のある項目を全て合算します。

具体例として、負債総額が2億円、自己資本が1億円の場合、「2億円 ÷ 1億円 × 100」で計算すると、負債比率は200%に。この数値は、自己資本の2倍の負債を抱えていることです。

計算に用いる数値は貸借対照表から確認できます。負債には短期借入金、買掛金などの流動負債と、長期借入金、社債などの固定負債が含まれ、自己資本は資本金、資本剰余金、利益剰余金などの合計額となります。

負債比率の目安

一般的に負債比率は100~150%程度が適正です。この範囲内であれば、負債と自己資本のバランスが取れており、財務的に安定していると判断してよいでしょう。

負債比率が100%以下の場合は、自己資本が負債を上回っている状態を表します。財務的に余裕があり、追加融資を受ける余地も大きいため、積極的な事業展開が可能な状態といえるかもしれません。

また、業種によって平均的な負債比率は大きく異なります。製造業や建設業では比較的低い水準が求められる一方、小売業や宿泊飲食業では200%を超えることも珍しくありません。自社の負債比率を評価する場合は、同業他社や業界平均との比較が重要です。

負債比率の改善方法

負債比率の改善方法

財務診断の結果、負債比率が高すぎると判断された場合は、計画的に改善しなければなりません。負債比率を下げるためには、自己資本を増やす方法と負債を減らす方法の両面からアプローチすることが効果的です。

自己資本を増やす

自己資本を増やす直接的な方法としては、増資や新株発行による資本金の増加が挙げられます。これにより分母となる自己資本が増え、負債比率を引き下げる効果が期待できるでしょう。

また、利益剰余金を積み増すことも自己資本増強の有力な手段です。事業で得た利益を社内に留保することで、長期的に自己資本を強化できます。配当政策を見直し、当面は内部留保を優先するという経営判断もおすすめです。

ただし、増資による自己資本増強は株主構成に変化をもたらすかもしれません。

株主配当の負担増加など、新たなコスト増加要因にもなり得るため、総合的に判断しましょう。

負債を減らす

負債比率改善の即効性が高い方法は、負債そのものを減らすことです。借入金や買掛金などの負債を計画的に返済することで、分子となる負債額が減少し、負債比率は直接的に改善します。

また、余剰資産や遊休不動産などを売却し、その資金を借入金返済に充てるという方法も効果的です。本業に直接関係のない資産を現金化することで、バランスシートをスリム化しながら負債を圧縮できます。

さらに、経費削減や業務効率化によるキャッシュフローの改善も重要です。日常的な経費見直しから始め、固定費の削減や変動費の効率化を進めることで、負債返済に回せる資金を確保できます。

利益率や収益性の向上

根本的な財務体質強化のためには、事業の収益性向上が欠かせません。商品やサービスの付加価値を高め、適正な価格設定を行うことで粗利益率の改善を図ることが可能です。

また、コスト構造の見直しも重要な取り組みです。原材料費や外注費の削減、生産性向上による人件費の最適化など、様々な角度からコスト削減を進めることで、営業利益率を高められるでしょう。

さらに、収益性の低い事業や不採算部門の整理・統合も検討すべきです。経営資源を収益性の高い分野に集中させることで、全体としての利益率向上につながり、結果として自己資本の増加と負債比率の改善を実現できます。

負債比率と自己資本比率の違い

負債比率と自己資本比率の違い

財務分析においては、負債比率と並んで自己資本比率も重要な指標とされています。両者は密接な関係にありながらも、計算方法や示す意味合いが異なるため、使い分けて活用することが大切です。

指標の定義と計算式の違い

負債比率は「負債 ÷ 自己資本 × 100」で算出されるのに対し、自己資本比率は「自己資本 ÷ 総資本 × 100」で計算します。

総資本は負債と自己資本を合わせた金額であり、資産総額と一致するものです。

負債比率は他人資本への依存度を示す指標であるのに対し、自己資本比率は企業の安全性や独立性を表す指標です。自己資本比率が高いほど、財務基盤が安定していると評価されます。

両指標は反比例の関係にあり、負債比率が高くなれば自己資本比率は低下し、逆に負債比率が低下すれば自己資本比率は上昇します。ただし、単純な逆数関係ではないため、両指標を併せて確認することが望ましいでしょう。

財務安全性の評価ポイント

自己資本比率が高い企業は、経済環境の変化や業績悪化などの外部要因に対する耐性が強く、長期的な安定経営が期待できます。一般的に、自己資本比率は30%以上が望ましいとされていますので、覚えておきましょう。

一方、負債比率が高い企業は金利負担や返済リスクが増大し、景気後退期などに経営が圧迫される可能性が高まります。特に変動金利の借入が多い場合は、金利上昇局面での影響に注意しなければなりません。

金融機関や取引先企業は、融資判断や取引条件の設定にあたり、負債比率と自己資本比率の両面から企業の信用力や安全性を評価します。両指標をバランス良く維持することが、外部からの信頼獲得につながるでしょう。

使い分けと活用シーン

負債比率は主に資金調達や借入余力の判断材料として活用されることが多い指標です。追加融資を検討する際や、事業拡大のための資金計画を立てる段階で参考となります。

対して、自己資本比率は企業の財務安定性や健全性を評価する際に重視される指標です。特に長期的な経営計画や投資判断において、自己資本比率の目標値を設定するのが一般的です。

企業買収や事業承継、株式公開などの重要な局面では、負債比率と自己資本比率の両指標が重要な判断材料になります。業界標準や取引先からの要求水準に応じて、適切なバランスを維持しましょう。

まとめ

負債比率は企業の財務健全性を測る重要な指標です。「負債 ÷ 自己資本 × 100」で算出され、一般的には100~150%程度が適正水準とされています。ただし業種によって平均値は異なるため、同業他社との比較も欠かせません。

負債比率が高すぎる場合は、自己資本を増やす取り組みと負債を減らす施策を並行して進めることが効果的です。また、根本的な収益力向上も含めた総合的な財務改善が望ましいでしょう。

自社の財務状況を定期的に確認し、負債比率などの指標を適正範囲内に保つことが、安定した経営と持続的な成長につながります。

この記事を書いた人

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ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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