現在掲載中の企業73件
資金繰り改善のために活用されるファクタリングですが、二重譲渡によるトラブルが発生するケースが増えています。二重譲渡は重大な法的責任を問われる可能性があり、企業経営に大きなリスクをもたらしかねません。
二重譲渡の仕組みとリスク、そして確実な防止策について詳しく解説します。ファクタリングを安全に活用するために必要な知識を身につけましょう。
ファクタリングは売掛債権を早期現金化できる便利なサービスですが、正しい知識や管理体制が不十分だと二重譲渡などの問題が発生するかもしれません。業者選びから契約手続き、債権管理まで注意点を押さえるのが重要です。
二重譲渡とは、同一の売掛債権を複数のファクタリング会社へ譲渡する行為を指します。
本来、一度譲渡した債権は既に他社の所有物となっているため、再度譲渡することは法的に認められません。
売掛債権は土地や建物と異なり形のない資産です。物理的な実体がなく目に見えないため、不動産などと比較して複数の会社へ譲渡することが技術的に可能になってしまいます。
二重譲渡は悪意を持って行われるケースもありますが、意図せず発生することもあるようです。資金繰りが急激に悪化し、焦りから複数の業者へ同じ債権を譲渡してしまうケースが該当します。
また、一社目の審査で否決されたため別の業者へ申し込んだところ、結果的に両社から承認されて二重契約となるケースも。債権管理が不十分な企業では、担当者間の連携ミスから誤って同じ債権を複数回譲渡してしまうことも起こり得るようです。
二重譲渡は必ずばれると考えるべきです。
ファクタリング会社は契約時に債権譲渡登記を行うことが一般的で、業者間でこれらの情報を照合することにより、同一債権の重複登録を簡単に検出できます。
売掛金の支払い期日が到来した際、債務者からの入金額が債権額に満たないと、ファクタリング会社は調査を開始します。未回収の理由を確認する過程で、他社へも同じ債権が譲渡されていた事実が露見するでしょう。
業界団体による情報共有体制も整備されつつあります。日本ファクタリング協会などを通じて、不正取引に関する情報は業者間で共有される傾向にあります。信用情報サービスを利用した取引先の与信管理も一般的となり、二重譲渡のような不正行為が明らかになるリスクは年々高まっているといえるでしょう。
大手業者の多くは専門の調査部門を設置し、不正取引の防止に努めています。取引データの分析や債務者への直接確認など、さまざまな手法で二重譲渡の兆候を察知する仕組みが構築されています。
二重譲渡行為は刑法上の詐欺罪に該当するでしょう。ファクタリング会社を欺いて不正に資金を得たとみなされ、3年以上10年以下の懲役刑が科されるケースもあります。
既に譲渡した債権は法的に他者の所有物となっているため、それを無断で第三者へ譲渡する行為は業務上横領罪としても問われます。業務上横領罪には最大10年以下の懲役刑が定められており、悪質な事例では実刑判決となることも珍しくありません。
刑事責任に加え、民事上の損害賠償責任も発生します。債権の買取金額に加え、遅延損害金や調査費用なども請求されるため、企業の財務状況を著しく悪化させる要因となりかねません。
さらに、二重譲渡が発覚すると金融機関や取引先からの信用を一気に失墜します。銀行融資の引き上げや取引停止など、企業存続に致命的なダメージを受けることになるでしょう。
二重譲渡は一時的な資金調達につながっても、発覚後のリスクは計り知れません。短期的な視点で手を出すべきではない行為です。
二重譲渡のリスクを理解したうえで、確実に防止するための対策を講じることが重要です。適切な内部管理体制の構築と信頼できる業者選定が、安全なファクタリング活用の鍵となります。
取引先との契約書に債権譲渡禁止条項が含まれていないか確認するのが重要です。譲渡禁止特約がある場合は、ファクタリングを検討する前に取引先から事前承諾を得るプロセスが必要です。
社内の債権管理台帳を整備し、どの債権がどの業者に譲渡されているかを正確に記録する仕組みを構築しましょう。
定期的な内部監査を実施することで、譲渡状況を可視化し、不正や誤りを早期に発見できます。
ファクタリング会社を選定する際は、金融庁への登録状況や過去の取引実績を徹底的に比較検討することが大切です。複数の利用者からのレビューも参考にし、トラブル発生時の対応実績なども確認するとよいでしょう。
契約書の内容を十分理解し、曖昧な点は必ず質問して明確にしておくことも重要です。特に債権譲渡の範囲や対抗要件具備の方法については、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
債権譲渡の二重譲渡リスクを軽減する最も効果的な方法は、法務局で債権譲渡登記を確実に行うことです。登記により第三者対抗要件を具備させれば、後から同じ債権を譲渡しようとしても法的に無効になるからです。
また、内容証明郵便で債務者への通知を行うのもよいでしょう。債権譲渡の事実を債務者に公式に通知することで、登記前の段階でも一定の効力発生を担保できます。通知後は債務者から譲受人へ直接支払いが行われるため、二重譲渡の余地が大幅に減少するでしょう。
さらに、オンラインで提供される登記情報を定期的に確認する習慣をつけましょう。
自社の譲渡済み債権が適切に登記されているか、また既譲渡債権の再譲渡リスクがないかを常にモニタリングすることが重要です。
登記手続きは専門知識を要するため、初めての場合は司法書士などの専門家に依頼するとよいでしょう。手続きの不備による問題発生を防ぎ、確実な対抗要件の具備を実現できます。
ファクタリング業者を選ぶ際は、金融庁や日本ファクタリング協会に登録されている業者かどうかを必ず確認しましょう。正規の登録業者は法令遵守体制が整っており、二重譲渡などのリスク管理も徹底しています。
複数の業者から見積もりを取得し、手数料率や入金スピード、取引実績などを比較検討することが大切です。極端に条件の良い業者には裏があることも考えられるため、総合的な観点から判断しなければなりません。
専門家のアドバイスや過去の利用者による口コミ評価も重要な判断材料となります。特に同業他社の評価や、トラブル発生時の対応実績について情報収集することで、信頼性の高い業者を見極めることができるでしょう。
また、業者との初回面談では、二重譲渡防止に関する取り組みについて質問するのがおすすめです。
適切な回答ができない業者は、リスク管理意識が低い可能性があるため注意しましょう。
ファクタリングにおける二重譲渡は、詐欺罪や業務上横領罪に問われる深刻な違法行為です。刑事罰に加え、損害賠償責任や信用失墜など、企業経営に致命的な影響をもたらします。
二重譲渡を防ぐためには、適切な債権管理体制の構築が不可欠です。社内での譲渡記録の徹底、債権譲渡登記の活用、信頼できる業者選定など、総合的な対策を講じましょう。
安全なファクタリング活用は、企業の資金繰り改善に大きく貢献します。二重譲渡のリスクを正しく理解し、適切な予防策を講じることで、企業価値向上につながるファクタリング活用が実現するでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。