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経営者や個人事業主にとって、資金調達は事業拡大における1つの課題です。昨今、従来の銀行融資や投資家からの出資以外に、売上に基づく新しい資金調達手段として注目されているのがRBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)です。
今回は、株式を発行することなく、将来の売上を担保にした資金調達が可能なRBFの仕組みやメリット、利用時の注意点について詳しく解説していきましょう。
RBFは、従来の融資や出資とは異なる特徴を持った仕組みです。売上実績や将来予測をもとに資金を調達する方法として、多くの企業で導入が進んでいます。
RBFは、将来発生する企業の売上を予測し、その一部を現金化して調達するという資金調達手法の1つです。「Revenue Based Financing」の略称であり、直訳すると「売上連動型資金調達」という意味になります。
株式を発行せず、返済は売上に連動し、エクイティ(出資型)とも融資型(借入)とも異なる仕組みで利用できます。通常の借入金のように毎月固定額を返済するだけでなく、実際の売上に応じて返済額が決まるため、経営の柔軟性を保ちながら資金調達できる仕組みです。
RBFの「変動受取型」は、売上の一定割合を返済金に充てるため、返済額が月ごとに変動します。
契約時に決めた売上の何パーセントを返済に回すかが決まっており、売上が増えれば返済額も増加し、売上が減少すれば返済額も少なくなる仕組みになります。
つまり、売上が上振れすると返済額も増えるが、売上が減る時は返済負担も小さくできるということ。季節変動の大きい業種や成長段階にある企業にとって、収益に応じた返済は大きな利点といえるでしょう。
RBFの「定額型」と呼ばれるモデルでは、返済率(例:毎月売上の6%)や返済総額(例:初期資金の1.5倍)を契約時に決めます。
返済額は売上に応じて多少変動しますが、返済総額や率は明確に定められており、変動受取型よりも返済計画が立てやすいのが特長です。
返済期間は6か月から2年程度の短期間に設定されることが一般的で、早期完済を求められるケースが多くなっています。
RBFには従来の資金調達方法にはない独特の利点がある一方で、利用にあたって注意すべき点も存在しています。メリットとデメリットを正しく理解した上で、自社の事業に適しているかどうかを慎重に判断することが重要です。
RBFは担保や個人保証が不要で、審査も収益性重視のため利用対象が広い制度となっています。不動産などの担保資産を持たない企業や、経営者が個人保証を避けたい場合でも利用できる仕組みです。
また、RBFは資産を持たないスタートアップでも利用しやすい資金調達手段です。
創業間もない企業や、無形資産が中心のIT系企業などでも、売上実績があれば審査の対象となる可能性が高いでしょう。
申込から契約までの期間が短く、最短数日で入金まで完了するケースもある迅速性が魅力となっています。オンライン完結型のサービスも増えており、書類提出から審査、契約まで全てインターネット上で完結できる場合もあるでしょう。
通常の銀行融資や出資と比べて手間も少なく、最速で事業資金が調達できる点が特徴です。銀行融資では1か月以上かかることもある審査期間が、RBFでは1週間程度で完了することも珍しくありません。
売上の予測や実績が審査基準となるため、まだまったく実績のない新規事業では利用が困難な制約が存在しています。特に、創業したばかりで売上がほぼ立っていない企業や、まったく新しい事業分野への参入時には審査に通らない可能性が高いでしょう。
一定の売上規模や継続的な収益が必要となり、安定性の見込める企業が前提です。月商数百万円以上の実績が求められることが多く、小規模事業者には少し利用のハードルが高い場合もあります。
RBFは銀行融資などより、手数料が高めに設定されるケースが目立つ傾向にあります。年率換算で10%を超える場合もあり、金利負担が事業収益を圧迫するリスクがあるでしょう。
調達した資金は会計上「負債」に計上されるため、財務バランスが悪化するリスクも考慮が必要となります。自己資本比率の低下により、今後の銀行融資などに影響が出る可能性もあるでしょう。
また、売上低迷時も返済が発生するため、返済原資が不足し、追加資金調達が必要になる事態もありえるでしょう。想定していた売上が達成できない場合、返済負担が経営を圧迫し、さらなる資金繰り悪化を招く悪循環に陥るリスクもあります。
RBFを検討する際は、単純なメリットだけでなく、事業への長期的な影響も含めて総合的に判断することが重要です。利用前に確認すべき重要なポイントを整理しておきましょう。
安定した収益モデルや継続的な売上がない場合は、RBFの審査に通らないことが多いです。月次売上の変動が大きすぎる業種や、単発の大型案件に依存している企業では利用が制限される場合があります。
また、定期収入が維持できる業態でないと返済負担が過度になるリスクがあります。
サブスクリプション型のビジネスモデルや、固定客からの継続受注がある企業の方が、RBFとの親和性が高いでしょう。
RBFで調達できる金額は、実際の売上や売上予測に基づき上限が決まる制約が存在しています。
月商の数か月分程度が一般的な上限となることが多く、大規模な設備投資には向いていません。
また、希望した金額全額の調達が保証されるわけではなく、事業成長や市場環境による変動もあるでしょう。売上実績が少ない企業や、将来予測に不安要素がある場合は、希望額を下回る調達額になることもあります。
RBFによる資金調達は負債扱いとなるため、自己資本比率が低下する影響が発生します。財務諸表上の見た目が悪化し、今後の銀行融資や他の資金調達に悪影響を与える可能性もあるでしょう。
そのため、財務バランスや今後の銀行融資への影響もあらかじめ検討して利用することが望ましいです。
税理士や会計士に相談するなど、財務面での長期的な戦略を練った上で、利用を判断することが重要となります。
RBFの特徴をより明確に理解するには、従来の資金調達方法との違いを把握することが重要です。それぞれの特徴を比較して、最適な調達方法を選択できるようになりましょう。
項目 | RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス) | 銀行融資 | ベンチャーキャピタル(VC) | ファクタリング |
---|---|---|---|---|
資金提供の形 | 将来の売上の一部を譲渡 | 借入金(負債) | 株式の取得(出資) | 売掛金の買い取り |
返済原資 | 売上 | 企業の利益 | 返済不要(株式売却益が目的) | 買い取られた売掛金 |
担保・保証 | 不要な場合が多い | 必要となることが多い | 不要 | 不要(売掛金が担保) |
経営への影響 | 希薄化なし、自由度が高い | 少ない | 経営権の希薄化、介入あり | 少ない |
スピード | 比較的速い | 時間がかかる | 時間がかかる | 非常に速い |
適した企業 | 安定した売上のある成長企業 | 安定した財務の企業 | 急成長を目指すスタートアップ | 売掛金が多い企業 |
銀行融資は財務内容や実績、信用力など多くの審査項目がある一方、RBFは主に売上にフォーカスして判断される特徴をもっています。決算書の内容が良くない企業でも、売上が安定していれば審査に通る可能性があるでしょう。
また、RBFは担保や保証人も不要なことが多く、早期の資金調達が実現できる利点があります。銀行融資と比較すると、担保を設定する必要がないため手続きが簡素化され、調達までの期間も短縮される傾向です。
銀行が重視する事業歴や財務安定性の条件をクリアできない企業でも、将来性のある事業であれば資金調達することが可能です。
ベンチャーキャピタル(VC)は株式の取得による出資形式で資金を提供し、将来の株式売却益を目的とした投資を行います。
返済義務はない一方で、VCは投資先企業の急成長を前提としており、取締役会への参加や重要な意思決定への関与を求めることが一般的です。
VCからの出資では経営権の希薄化が避けられず、投資家の意向によって事業計画の変更や経営陣の交代を求められる場合もあります。一方、RBFでは株主構成が変わらないため、経営権を完全に維持したい企業には有利な選択肢となるでしょう。
ファクタリングでは確定した債権しか現金化できませんが、RBFでは将来の収益見込みも含めて資金調達が可能となります。
返済も一括ではなく、売上に連動した決済や分割形式です。ファクタリングは売掛金の回収時に一括で精算されますが、RBFは継続的な返済スケジュールに基づいて進められます。
調達範囲や返済方式の柔軟性が異なり、用途や事業モデルで使い分けが可能です。
短期的な資金需要にはファクタリング、中長期的な事業資金にはRBFというように、目的に応じて選択することが効果的です。
RBFは全ての企業に適した資金調達方法ではありません。事業モデルや売上構造によって、RBFとの親和性は大きく異なります。ここでは、どのような企業がRBFに向いているかを確認しておきましょう。
継続課金や安定した売上が見込めるビジネスでは売上予測がつきやすく、RBFを活用しやすい環境が整っているといえます。月額課金制のサービスを提供している企業では、将来の売上がある程度予測可能なため、RBFの審査でも高く評価されるでしょう。
SaaS型は契約数や解約率で将来収入の精度が高いため、審査でも有利になりやすい特徴をもっています。顧客の継続率や月次成長率などの指標が明確で、データに基づいた売上予測が立てられることが評価されるでしょう。
消費者ダイレクト型(D2C)やEC事業では、オンライン上で売上データが可視化されており、RBFとの親和性が高い業態となっています。リアルタイムでの売上把握や詳細な顧客分析が可能なため、精度の高い売上予測ができるでしょう。
実際の購買傾向や、月次売上を指標に調達枠が設定できる利点もあります。
過去の販売データから季節変動やトレンドを分析し、合理的な将来予測を提示することで審査時に評価されるでしょう。
銀行融資が困難な起業初期や、短期間で強い成長を目指す企業にもRBFは適している選択肢となっています。実績が少なくても将来性が認められれば資金調達が可能で、成長機会を逃すことなく事業を拡大できるでしょう。
事業計画に基づき必要な資金を即時に調達し、事業機会を逃さない運営が狙えます。
競合他社に先駆けて市場参入したい場合や、短期間でのシェア獲得を目指す場合に威力を発揮してくれるでしょう。
RBFは将来の売上を担保とした新しい資金調達手法として、従来の融資や出資では対応できないニーズに応えています。株式の希薄化を避けながら迅速な資金調達が可能で、担保や保証人も不要な点が大きな特徴です。
一方で、安定した売上実績が前提となるため、全ての企業に適用できるわけではない制約があります。調達コストも銀行融資より高く、財務への影響も考慮する必要があるでしょう。
自社の事業モデルや成長段階を踏まえ、他の資金調達方法と比較検討した上で、最適な選択肢として活用することが重要です。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。