売掛金に遅延損害金は発生する?利率、請求できなくなるケースも解説

売掛金に遅延損害金は発生する?利率、請求できなくなるケースも解説

売掛金の支払期限を過ぎても入金がなく、資金繰りに影響が出ている経営者は多いでしょう。そんな状況で「遅延損害金」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。

本記事では、売掛金の遅延損害金について利率や請求できなくなるケース、未回収を防ぐ方法まで実務的な観点から解説します。

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売掛金に遅延損害金は発生する?

売掛金に遅延損害金は発生する?

売掛金の入金遅延は経営に大きな影響を与えます。支払期限を過ぎても入金がない場合、取引先に対して遅延損害金を請求できるのか、法的な根拠や実務上の取り扱いについてなど解説しましょう。

売掛金に遅延損害金が発生するかどうか

売掛金が支払期限を過ぎても入金されない場合、取引先に対して遅延損害金を請求することが可能です。法律上、債務の弁済が遅れた場合には損害賠償として遅延損害金を請求する権利が債権者に認められています。

取引先との契約書に遅延損害金についての取り決めがない場合でも、法定利率に基づいて請求可能です。

民法や商法の規定により、支払期限の翌日から実際に支払いがあった日までの期間に対して遅延損害金が発生します。

売掛金の遅延損害金の利率

遅延損害金の利率については、まず契約書で定められている場合はその利率が適用されます。契約書に明記されている場合は、当事者間の合意として最優先しましょう。

契約書で定めがない場合、商取引においては商法の規定が適用され、年6.0%の法定利率が一般的です。

民法上の法定利率は年3.0%ですが、事業者間の商取引には商法が優先して適用されるため、より高い利率となります。

また、契約で遅延損害金の利率を設定する場合、あまりに高い利率(年20%超など)を設定すると社会通念上問題となるかもしれません。利息制限法や出資法の上限金利を参考に、適切な範囲内で設定しましょう。

遅延損害金の発生が経営に与える影響

取引先に対して遅延損害金が発生している状況は、その取引先の資金繰りが悪化している可能性を示すサインとなります。支払いが遅れるということは、単なる事務手続きの遅れではなく、根本的な財務状況の悪化を示唆していると考えてよいでしょう。

遅延損害金を請求できる法的権利があっても、実際に回収できるかどうかは別問題です。取引先の経営状態が深刻に悪化している場合、元本である売掛金そのものの回収すら危ういかもしれません。

早期の対応が重要であり、支払いが遅れ始めた段階で状況確認や回収強化を図るのが必要です。場合によっては、ファクタリングなどを活用して売掛金を早期に現金化することも検討しましょう。

売掛金の遅延損害金が請求できなくなることはある?

売掛金の遅延損害金が請求できなくなることはある?

売掛金の遅延損害金は永久に請求できるわけではありません。法律上、一定期間が経過すると請求権が消滅する「時効」という制度があります。詳しく解説しましょう。

消滅時効に触れつつ時効の完成を阻止する方法

売掛金およびそれに付随する遅延損害金には消滅時効があります。

2020年4月の民法改正後は、事業者間の売掛金については原則として5年の時効期間が適用され、時効期間が経過すると、債務者が時効を援用することで債権者は請求権を失います。

時効の完成を阻止するには、内容証明郵便による催告が効果的です。催告を行うことで、6ヶ月間の時効猶予期間が発生します。ただし、催告だけでは時効の完成を永久に阻止することはできません。

時効を確実に中断(法改正後は「更新」)するには、裁判上の請求や支払督促、民事調停などの法的手続きを行わなければなりません。裁判所を通じた正式な請求手続きにより、時効期間はリセットされ新たに進行し始めます。

売掛金と遅延損害金の消滅時効の関係

売掛金本体の債権が時効によって消滅すると、それに付随する遅延損害金についても請求できなくなります。主たる債権が消滅すれば、従たる債権である遅延損害金も同時に消滅するという法理が適用されるためです。

時効期間の起算点は支払期限の翌日からとなります。複数の売掛金がある場合は、それぞれの支払期限ごとに個別に時効が進行するため、古い売掛金から順に時効が完成していくことになります。管理表などで各債権の支払期限を明確に把握しておきましょう。

時効成立を防ぐためのポイント

時効が近づいている売掛金がある場合は、速やかに内容証明郵便で催告を行い、その後の対応を検討すべきです。催告後6ヶ月以内に訴訟提起などの法的手続きに移行することで、時効の完成を阻止できます。

取引先との交渉過程で債務の承認を得ることも時効更新の手段の1つです。

支払い誓約書の取得や、一部入金があった場合も債務の承認と見なされ、時効が更新されます。

書面による承認を得ることが望ましいですが、メールでの承認も証拠として有効です。

日常業務において債権管理表を作成し、各売掛金の支払期限と時効到来日を明確に管理するのが実務上不可欠です。特に取引量の多い企業では、債権管理を担当者任せにせず、システム化して組織的に取り組みましょう。

売掛金の未回収を回避する方法

売掛金の未回収を回避する方法

売掛金の未回収は経営に大きな打撃を与えます。適切な与信管理から回収遅延時の対応まで、体系的な債権管理の仕組みを構築しなければなりません。

予防策と対応策の両面から売掛金の未回収リスクを低減し、健全な資金繰りを維持するための実践的な方法について解説しましょう。

売掛金の未回収を回避する方法とは?

売掛金の未回収リスクを減らすためには、取引開始前の与信調査が基本です。

帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社を活用し、取引先の財務状況や支払い履歴を確認しましょう。

信用力が低い取引先には現金取引や前払いなど、条件を厳しく設定することが重要です。

契約書や請求書には支払期限を明確に記載し、遅延損害金の利率や期限の利益喪失条項なども明記しておきます。支払条件が明確であれば、支払い遅延時の対応もスムーズになるでしょう。

定期的に債権管理表を作成・更新し、入金状況を可視化することで早期に異常を発見できます。売掛金の滞留日数が長くなるほど回収率は下がるため、異常を早期発見し対応するのがおすすめです。

回収遅延時の具体的な対応策

支払期限を過ぎたら、まず電話やメールで催促します。連絡を取ることで支払い遅延の理由を把握し、対応策を検討できます。取引先の資金繰りに問題があるなら、分割払いの提案なども検討しましょう。

支払い意思がない場合や連絡が取れない場合は、内容証明郵便による正式な督促を行います。それでも改善がなければ、少額訴訟や支払督促などの法的手続きに移行することを検討しましょう。

また、買主の資金繰り悪化が疑われる場合は、新規の出荷を停止するとともに、既存の売掛金については債権譲渡担保の設定や連帯保証人の追加など、回収可能性を高める対策を講じるのがおすすめです。

未回収リスクを低減するための事前対策

重要な取引では、契約時に公正証書を作成し、強制執行認諾文言を入れておくことで、万が一の際の法的手続きを簡略化できます。裁判を経ずに強制執行が可能となり、回収の確実性が高まるでしょう。

中小企業の場合、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入もおすすめです。取引先が倒産した場合に共済金の貸付を受けられ、資金繰りへの影響を軽減できます。

また、顧客ごとの回収状況を継続的に管理し、支払い遅延の傾向がある取引先には早めの対応を徹底します。取引条件の見直しや担保の設定など、リスクに応じた対策を講じ未回収リスクを低減しましょう。

まとめ

売掛金の支払期限を過ぎると、法律上は遅延損害金が発生します。契約で定めがなくても、商取引では年6.0%の法定利率が適用されるため、請求権を行使できます。ただし、消滅時効により5年経過すると請求できなくなるため、早めに対応しなければなりません。

時効を阻止するには内容証明郵便による催告や裁判上の請求が効果的です。未回収を防ぐには、与信管理の徹底や契約書の整備、定期的な債権管理表の確認など、事前対策と迅速な対応が欠かせません。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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