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借入金利は、事業資金調達の際に必ず考慮すべきものです。経営者にとって少しでも有利な条件で資金を調達するためには、借入金利の仕組みを理解し、相場を把握することが欠かせません。今回は、借入金利について相場と仕訳方法、計算方法について解説します。
借入金利は、資金調達において利益を左右する重要な指標です。金利が低ければ返済負担が減少し、高ければ資金繰りを圧迫する要因となるでしょう。金融機関によっても設定基準や計算方法が異なるため、比較検討する際は細部まで確認することが肝心です。
借入金利とは、「借りた金額に対して必要になる利息」のことを指します。利息とは借りたお金を使用する対価であり、元金に対する一定割合で計算されるものです。
住宅ローンやビジネスローンなど、ほとんどの金融商品において借り入れには金利が発生します。金融機関にとっては収益源となる一方、借り手にとっては返済時の負担部分です。
借入金利は一律ではなく、様々な要因によってパーセンテージが変動します。金融機関の種類や商品内容などによっても、異なる金利が適用されるのです。
具体的に借入金利は、借入額(利用限度額)、リスクの大きさ、審査の条件、景気などの要因によって変動します。金融機関は貸し倒れリスクを考慮した上で金利を設定するため、借り手の状況によっても金利が上下する傾向があります。
一般的には、借入額が大きくなるほど、低金利が設定されるでしょう。大口融資では金融機関の事務コストが相対的に低くなることや、優良顧客として扱われることがその理由です。
また、日本銀行(日本の中央銀行)の政策金利、金融市場の動向、経済指標なども借入金利に影響を与えます。
政策金利の引き上げ・引き下げに連動して民間金融機関の貸出金利も変動するため、経済全体の動向を把握することも大切です。
借入金利には大きく「年利」と「月利」があり、ほとんどの金融商品では年利が採用されています。
年間の利息が元金に対して何パーセントかを示す数値が年利であり、多くの金融商品ではこの表記が一般的です。
月利で表示されている場合は、12倍して年利に換算した上で検討します。例えば月利1.5%は年利18%となり、実質的な負担は大きくなるため注意が必要です。
借入金利の上限は年15%~20%程度に設定されています。基本的に「利息制限法」によって上限が定められており、消費者金融などでも法定金利を超える金利設定はできません。
借入を検討する際には、各金融商品の金利相場を把握することが重要です。提示された金利が適切かどうかを判断するためには、金融商品ごとの特徴や金利設定の基準を理解する必要があります。また、同じローン商品でも、借入先や個人の信用力によって金利が変わることがあるため、複数の選択肢を比較検討するようにしてください。
住宅ローンは、不動産を担保とすることで長期間にわたり安定した返済が見込まれるため、金融商品の中でも特に低金利で提供されています。また、借入金額が高額になることも、低金利になる理由といえるでしょう。
一般的に、変動金利型では0.3~0.6%、固定金利型では1~2%の範囲で設定されることが多いです。固定金利の方が高くなりやすい理由は、市場金利の変動リスクを金融機関が負担するためです。一方、変動金利は市場金利に応じて利率が変わるため、低水準で借りられる可能性がある反面、将来的な金利上昇のリスクも考慮すべきでしょう。
自動車を購入する際に利用するカーローンは、銀行系とディーラー系の2つに大別され、それぞれ金利水準が異なります。
銀行が提供するカーローンの金利は、2~4%程度に設定されることが多く、ディーラー系のローンは3~7%程度となる傾向があります。一般的に、銀行系の方が低金利ですが、審査が厳しく融資までの手続きに時間がかかることも多いため、迅速に購入したい場合はディーラー系のローンが選ばれることもあるでしょう。
カードローンは、無担保・保証人不要で利用できる融資であり、その分リスクが高いため、他のローン商品よりも金利が高めに設定されています。
銀行系カードローンの場合は3~14%、消費者金融系では14~18%の範囲内で設定されるのが一般的です。特に、消費者金融のカードローンは即日融資に対応しているケースが多く、審査のスピードが速いことが特徴ですが、その分高金利が適用される点に注意しなければなりません。
教育ローンは、学費や入学金の支払いを目的とした融資で、政策的に低金利で提供されていることが特徴です。
日本政策金融公庫の教育ローンは、令和7年(2025年)1月時点で固定金利で年2.65%です。ただし、一定条件に該当すると年2.25%になります。一方で、民間の金融機関が提供する教育ローンは2~5%程度の金利が設定されており、他の無担保ローンと比べると低水準で利用できます。公的機関の教育ローンは金利が低い反面、所得制限が設けられている場合があるため、すべての家庭が利用できるわけではありません。
ビジネスローンは、事業者向けの融資商品であり、借入先や担保の有無によって金利水準が大きく異なります。
銀行系のビジネスローンでは1~15%程度の金利が適用されることが多いですが、ノンバンク系のビジネスローンでは5~18%と高金利での融資となる場合もありです。
銀行系は低金利で借りられるメリットがあるものの、審査が厳しく融資までに時間がかかる傾向があり、一方のノンバンク系は審査が比較的緩やかで即日融資が可能なケースもあるため、緊急の資金調達には適していると言えます。
フリーローンは、資金使途に制限がないため、住宅ローンや自動車ローンと比較すると金利が高めに設定されています。
銀行系のフリーローンの金利は、一般的に年3.0~14.0%程度となっており、消費者金融系のフリーローンでは年14.0~18.0%程度に設定されることが多いです。銀行系フリーローンは、審査に時間がかかるものの、低金利で融資を受けられる可能性が高いのが特徴です。一方で消費者金融系のフリーローンは、審査が比較的スピーディーで即日融資も可能な場合がありますが、金利はやや高めに設定される傾向があります。
金融商品 | 種類 | 一般的な金利相場 |
---|---|---|
住宅ローン | 変動金利型 | 年0.3~0.6% |
固定金利型 | 年1~2% | |
カーローン | 銀行系 | 年2~4% |
ディーラー系 | 年3~7% | |
カードローン | 銀行系 | 年3~14% |
消費者金融系 | 年14~18% | |
教育ローン | 日本政策金融公庫 | 年2.25%(一定条件下で2.65%) |
民間金融機関 | 年2~5% | |
ビジネスローン | 銀行系 | 年1~15% |
ノンバンク系 | 年5~18% | |
フリーローン | 銀行系 | 年3~14% |
消費者金融系 | 年14~18% |
会計処理の観点からも借入金利の取り扱いは重要です。
正確な仕訳を行うことで会計帳簿が適正に保たれ、税務上のリスクも回避できます。借入金と支払利息を明確に区別した処理が基本となります。
支払利息は、他社や金融機関からの借入金に対する利息を記帳する勘定科目です。元金の返済とは区別して処理することで、財務状況を正確に把握することができます。
支払利息は損益計算書上、営業外費用に属します。本業の売上原価や販売費および一般管理費とは別に計上されるため、企業の本業の収益力を測る指標には影響しません。
借入金の返済期限が1年以内か1年を超えるかで、短期借入金か長期借入金かの仕訳が異なります。会計上は返済期限に応じて適切に区分することで、企業の短期的・長期的な財務状況を明確に表示できます。
1年以内の返済の場合は、(借)短期借入金 200万円、支払利息 20万円 (貸)現金 220万円。短期借入金として計上することで、1年以内に返済が必要な債務として財務諸表に明示されます。
1年超の返済の場合は、(借)長期借入金 300万円、支払利息 30万円 (貸)現金 330万円。長期借入金として計上することで、長期的な債務として財務諸表に表示されます。
返済期限が到来した長期借入金は、短期借入金へ振り替える仕訳処理が必要です。例えば、(借)長期借入金 100万円 (貸)短期借入金 100万円という仕訳を行うことで、1年以内に返済すべき債務として適切に表示されます。
支払利息は経費として計上できるが、借入金の返済額は経費にはなりません。元金の返済は単なる資産と負債の入れ替わりであり、損益計算書には影響しないため注意が必要です。
前払いした支払利息は「前払費用」や「前払利息」として費用の繰延べ処理が必要です。期末に未経過分の利息がある場合は翌期以降の費用として繰り延べ、当期の費用から控除します。
未払いの支払利息は「未払費用」や「未払利息」として費用の見越し処理が必要です。期末日までに発生しているが支払いが翌期になる利息は、当期の費用として計上しなければなりません。
借入金利の負担を少しでも軽減するためには、日頃から金融機関との関係構築や交渉のノウハウを身につけることが大切です。計画的な資金調達戦略を立てることで、事業運営の安定性にもつながります。
利用限度額が上がるほど金利が低く設定される傾向があるため、増額申請を検討します。
ただし、必要以上の枠を確保すると維持コストがかかる場合もあるため、事業規模や資金需要を踏まえた適切な枠の設定が重要です。
金融機関が提供する金利優遇キャンペーンや、特典を積極的に利用するのも手です。
給与振込や公共料金の自動引き落としなど、取引を集約することで優遇金利の適用対象となる場合があるでしょう。
また、個人の方の場合は、住宅ローン併用サービスなど、特定の条件下で低金利が適用されるサービスを活用するのもおすすめです。複数の金融商品を組み合わせることで、単体で借りるよりも有利な条件を引き出せる可能性があります。
取引銀行を増やすことで、金融機関間の競争を活用し、より良い金利条件を引き出せる可能性があります。ただし、すべての企業が競争原理を活用できるわけではなく、信用力のある企業ほど有利な交渉が可能です。
過度な金利交渉を繰り返すと、金融機関の信頼を損なう恐れがあるため、適切な範囲で行うことを踏まえた上で交渉しましょう。
方法としては、複数の銀行から同時に融資の提案を受け、低金利の提示を引き出す交渉を行います。各金融機関の提案内容を比較検討し、より好条件の提案を引き出すことも効果的です。金利に関する知識や相場観を持っていることをアピールすることで、金融機関側も誠実な対応をせざるを得なくなるでしょう。
返済実績を積み重ねることで、金融機関からの信頼を獲得し、将来的な融資条件改善につなげることができます。ただし、金利引き下げの交渉を行う際は、単なる返済実績の積み重ねだけでなく、財務状況の改善や事業の成長など具体的な根拠を示すことが重要です。
また、金融機関と定期的に情報交換を行い、決算期後や事業成長のタイミングを見計らって交渉することで、より有利な条件を引き出せる可能性が高まるでしょう。
定期的に金融機関と面談し、借入条件の見直しや金利引き下げの可能性を探るのも良い方法です。
半年に一度程度の頻度で情報交換の場を設けることで、良好な関係を維持しながら、融資条件の改善チャンスを逃さないことを意識しましょう。
借入金利は事業資金調達において重要な要素であり、金融商品によって相場が大きく異なります。住宅ローンやカーローンは担保があるため低金利である一方、カードローンやフリーローンは無担保のため高めの金利設定となっています。
借入金利を抑えるためには、複数の金融機関と取引関係を構築し、競争原理を働かせることも効果的です。また、返済実績を積み重ね信頼関係を築くことで、より有利な条件での借入が可能になるでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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