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中小企業や個人事業主が直面する課題のひとつに、売掛金の未回収問題があります。取引先から支払いがなく、時間が経過してしまうと「時効」が成立し、法的に回収が困難になるケースが少なくありません。そこで今回は、請求書に関する時効の正しい知識について解説します。適切な対応を取ることで、資金繰りの安定化につなげましょう。
請求書に基づく債権の時効期間や関連する法改正について把握することは、事業経営において非常に重要です。相手から支払いがない場合、時効期間内に適切な対応を取らなければ、せっかくの売掛金が回収不能になりかねないのです。
民法改正により、2020年4月以降に発生した請求書の債権に関する時効期間は、原則として5年に統一されました。
債権の種類にかかわらず、権利を行使できることを知った時点から5年間、権利を行使できるようになった時点から10年間と定められています。
改正法は2020年4月1日以降に発生した債権に適用されるため、それ以前に発生した債権については改正前の民法に基づく時効期間が適用される点に注意が必要です。取引日をしっかり確認し、どの時効期間が適用されるか正確に判断しましょう。
改正前の民法では、債権の種類によって時効期間が細かく分かれていました。飲食店や小売業などによる商品の売買代金請求権は2年、弁護士や医師など専門家の報酬請求権は3年と定められていました。
一般的な債権については、民事上の債権は10年、商行為によって生じた債権は5年と規定されていました。2020年3月31日以前に発生した債権については、発生時期に応じてこれらの時効期間が適用されます。自社の債権が発生した時期によっては、どの分類に当てはまるのか確認するため、必要に応じて専門家に相談することも検討しましょう。
請求書の時効が成立すると、法律上の請求権が消滅します。未払いの債権が存在していても、法的な回収手段を取ることができなくなり、相手方が時効を援用すれば支払義務を免れることになります。
時効成立後に送付した請求書は、仮に裁判手続きをしても支払いの強制はできません。相手方が任意で支払うことは可能ですが、時効援用された場合は諦めるしかありません。
未払いの売掛金に気づいた場合、迅速かつ適切な対応が求められます。まずは社内の状況確認から始め、効果的に債権回収を実施しましょう。
売掛金の未払いに気づいたら、まず請求書が正しく送付されているかを確認しましょう。請求書の宛先、送付方法、送付日時などを調べ、取引先に確実に届いているかが重要です。
請求書の内容や金額に誤りがないかも重要なチェックポイントです。金額の計算ミスや契約内容との不一致があれば、取引先が支払いを保留している可能性もあります。請求内容に問題がないか社内で情報を共有し、入念に確認しましょう。
入金予定日や問い合わせの有無も合わせて確認します。取引先からの問い合わせや支払い予定に関する連絡があったにもかかわらず、対応が漏れている場合もあるでしょう。
請求書の送付忘れが判明した場合は、速やかに上司や経理担当者などの関係者に報告することが優先事項です。事実を隠さず、正確に状況を共有することが重要です。
また、取引先に対しては誠実な姿勢で説明し、謝罪した上で請求書を新たに発行します。多くの取引先は事務的なミスを理解してくれますが、信頼関係を損なわないよう丁寧な対応を心がけましょう。
また、再発防止に向けて、なぜ請求書の送付が漏れたのか原因を分析することも重要です。担当者の引継ぎ不備や多忙、システム上の問題など、様々な要因が考えられるでしょう。
請求書を正しく送付しているにもかかわらず入金がない場合は、まず取引先に電話やメールで連絡し、入金状況や予定日を確認します。単なる支払い忘れやシステム上のトラブルなど、簡単に解決できるケースも少なくありません。
連絡しても反応がない場合や、支払いの意思が感じられない場合は、請求書の再発行や内容証明郵便での催告を検討します。書面での記録を残しておくことが重要で、後々のトラブル防止や法的手続きの際の証拠になるでしょう。
それでも支払いがない場合は、督促や法的手段も視野に入れる必要があります。支払督促や訴訟といった法的手続きは、取引関係が悪化する可能性もありますが、時効成立を防ぐためには有効な手段です。状況に応じて弁護士などの専門家に相談しましょう。
時効期間が迫っている債権がある場合、時効を更新する方法があります。状況に応じた方法を選択し、計画的に対応することが重要です。
時効完成が近づいている場合、内容証明郵便などによる催告を行うことで時効期間を6ヶ月延長することができます。催告とは、債務者に対して債務の履行を求める行為であり、書面で行うようにしましょう。
民法の規定により、催告による時効延長は一度しか認められず、催告から6ヶ月以内に裁判上の請求などの手続きを行わないと効力を失います。
時間的な猶予を得るための一時的な措置と理解しておきましょう。
催告を行った証拠を残すためにも、内容証明郵便の利用が推奨されます。内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を送ったかを公的に証明できるため、後々の紛争時に証拠として提出することも可能です。
時効を確実に更新させる方法として、訴訟の提起や支払督促など裁判所を介した手続きがあります。裁判上の請求が認められると、時効期間がゼロからリセットされるため、時効成立のリスクを大きく減らすことができます。
ただし、法的手段を取る際は、取引の記録や請求書のコピー、契約書など証拠書類の整理が重要です。状況によっては弁護士への依頼も検討し、専門的なアドバイスを受けながら進めるとよいでしょう。
債務者が未払い金の存在を認めること(債務の承認)によっても、時効を中断することができます。債務の承認には特定の形式は必要ありませんが、後日の証明のために書面やメールなど記録に残る形で行うことが望ましいです。
例えば、債務者から「支払いが遅れて申し訳ありません」「近日中に支払います」といった連絡があった場合、未払い債務の存在を認めたことになり、時効中断の効果が生じます。
交渉の過程でこうした債務の承認を得られれば、時効はリセットされるのです。
とはいえ、債務の承認を得るには、あくまで相手の自発的な意思が必要になります。強引な方法で承認を迫ると、後々のトラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。
請求書の時効は2020年4月の民法改正により原則5年となりましたが、発生時期により旧法の時効期間が適用されるケースもあります。時効が成立すると債権回収が法的に不可能になるため、期間管理が重要です。
未払いに気づいたら請求内容の確認から始め、状況に応じた対応を取ることが必要です。時効延長には内容証明郵便による催告、裁判上の請求、債務の承認といった方法があります。適切な債権管理と迅速な対応で、経営の安定化を図りましょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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