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資金繰りを改善する手段としてファクタリングが注目されていますが、実際にどの業界で多く活用されているかをご存知でしょうか。業種によって異なる資金ニーズや取引構造から、ファクタリングの利用状況は大きく変わります。各業界のファクタリング利用率を解説し、業種別の活用事例や特徴を紹介しながら理解を深めていきましょう。
ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる金融サービスですが、業種によって利用率に差があります。認知度や利用目的、市場規模について見ていきましょう。
2021年3月における金融庁の貸金業利用者に関する調査・研究によると、ファクタリングの認知度は22.1%と比較的低い水準にとどまっています。
多くの方がファクタリングというサービス自体を知らない状況が現状です。
個人事業主のファクタリングの利用経験率については11.2%と低く、まだ浸透段階にあるといえるでしょう。既存の融資サービスと比較すると認知度が低い点が課題となっているのが実情です。
ファクタリングを利用した事業者の借り入れ理由としては、1位が44.7%でつなぎ資金(短期の運転資金)に充てるため、2位が同じく31.6%で設備資金に充てるためとなっています。
中小企業や個人事業主が資金調達においてファクタリングを選択する背景には、銀行融資と比較して審査基準が柔軟である点が大きく影響していると考えてよいでしょう。財務状況や業歴だけでなく、将来の売上見込みや事業計画を総合的に評価する傾向があるため、創業間もない企業や一時的な業績悪化を経験している企業でも利用できる可能性が高いといえそうです。
ファクタリングは主に運転資金の確保や資金繰りの改善のために利用されています。月末の給与支払いや仕入れ代金など、定期的に発生する支出に対応するための資金調達手段として活用されるケースが多く見られます。
急な大型受注への対応や支払いサイトの短縮にも活用されており、大口の注文を受けた際、材料費や人件費などの先行投資が必要になるケースでは、ファクタリングによって即座に資金を調達できる利点が大きいといえるでしょう。
固定費の支払いや突発的な出費への対応にもファクタリングが利用されています。機械の故障や災害対応など予測できない支出が発生した場合でも、保有する売掛金を現金化することで柔軟に対応できる点が高く評価されているのが現状です。
季節変動の大きい業種では、繁忙期と閑散期の売上格差を埋めるための資金調達手段としてファクタリングが選ばれています。観光業や小売業など季節要因による売上変動が大きい業種では、閑散期の固定費支出を安定させるための手段としてファクタリングを活用するケースが増加傾向にあるといえるでしょう。
事業拡大や新規事業への投資資金としてファクタリングを利用するケースも少なくありません。銀行融資では審査に時間がかかるプロジェクトでも、ファクタリングであれば既存の売掛金を活用して素早く資金調達できるため、市場の変化に対応したスピーディーな経営判断が可能になります。
取引先の倒産リスクに備えるために利用されるケースもあり、売掛金の保全目的で利用される「保証型ファクタリング」では、債権の買取と同時に取引先の信用リスクをファクタリング会社が負担するため、中小企業の経営リスク軽減策として注目度が高いといえるでしょう。
2023年時点で日本のファクタリングの市場規模(売掛債権買取額)は5.7兆円と推計されています。
銀行融資と比較するとまだ小規模ながら、年々市場規模は拡大傾向が鮮明になっています。従来の銀行融資と比較して審査が柔軟であることや、即日での資金調達が可能な点が成長を促進している要素と考えられるでしょう。
特に中小企業向けの少額ファクタリング市場では、100万円未満の小口案件を手軽に利用できるサービスが登場し、新規利用者の開拓に成功しています。従来はファクタリングの対象とならなかった小規模事業者にもサービスが広がっており、市場の裾野が広がっている状況です。
業界の健全化に向けた取り組みも市場拡大に寄与しています。ファクタリング事業者による自主規制団体の設立や、適正な手数料設定に関するガイドラインの策定など、利用者保護の枠組みが整備されつつあることで、ファクタリングに対する信頼性向上と利用促進が進んでいます。
業種によって、ファクタリングの利用率には大きな差があるのをご存じでしょうか。各業界の特性と資金需要の関係から、利用率が高い業界について詳しく見ていきましょう。
運送業と製造業ではファクタリングの利用率が高いと言われています。両業界とも売掛金の回収サイクルが長く、資金繰りに課題を抱えているケースが多いのが原因と考えられるでしょう。
運送業では、車両購入や突発的なトラブル対応のための資金確保にファクタリングが活用されています。高額な車両購入費用や燃料費の変動に対応するため、安定した資金調達手段としてファクタリングの価値が認められています。
製造業では掛売りが基本であり、売掛債権の回収までの期間が長期化しやすいためファクタリングの需要が高いようです。材料調達から製品納入、入金までの期間が長く、その間の運転資金確保が大きな課題となっているのが実態といえるでしょう。
製造業の中でも、季節性の高い商品を扱うメーカーや部品供給業者でファクタリングの利用率が特に高い傾向があります。生産から納品、入金まで数ヶ月を要する場合でも、ファクタリングを活用することで製造ラインの稼働を維持し、安定した生産体制を確保できるメリットが大きいのも利用を後押ししているようです。
建設業では、大規模工事の多額の先払いや長期の支払サイトに対応するためファクタリングが利用されています。建設現場では着工時の資材調達や人件費など先行投資が必要な一方、支払いは工事完了後になるケースが一般的な商習慣となっています。
サービス業や情報通信業では、サービス提供にかかるコストが大きいためファクタリングの利用率が高いようです。特にIT業界ではプロジェクト完了までの期間が長期化する傾向が強く、その間の資金繰りを安定させる手段として、ファクタリングが重要な役割を担っています。
小売業では、クレジットカード決済の増加に伴いクレジット債権の資金化にファクタリングが活用されています。顧客のカード払いが増えると入金サイクルが長くなりがちな状況下で、ファクタリングで即時現金化することにより、資金繰りの改善効果が期待できるようです。
人材派遣業では、派遣スタッフの給与支払いと取引先からの入金のタイミングのズレを解消するために、ファクタリングが利用されています。月末の給与支払いに対し、取引先からの入金が翌月以降になるケースが多く、キャッシュフローのギャップを埋める手段として、ファクタリングが重要な役割を果たしていると考えてよいでしょう。
ファクタリングは業種によって利用率に差が生じており、特に運送業や製造業といった売掛金の回収期間が長い業界で積極的に活用されています。建設業やIT業界など先行投資が必要な業種でも高い需要が見られ、事業特性に応じた資金調達方法として認識が広がっています。
認知度はまだ低い水準ながらも、市場規模は年々拡大しており、今後さらに多くの業種での活用場面が増えることも予想されます。資金繰りに課題を抱える事業者にとって、ファクタリングは効果的な選択肢の一つになるでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。