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資金調達や債権管理に関わる金融サービスとして、ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)が存在します。両者は似た業務を扱うように見えますが、実際には目的や対象となる債権、法的位置づけなど多くの点で異なります。事業資金の調達や債権管理を行うために、それぞれの特徴と違いを理解しておきましょう。
ファクタリング会社は、企業が保有する売掛債権を買い取ることで、支払期日前に現金化するサービスを提供しています。銀行などの金融機関とは異なる審査基準で、柔軟かつスピーディーな資金調達を可能にしている点が特徴です。
ファクタリング会社のサービスを利用するのは、主に個人事業主や中小企業です。大企業と比較して自己資本が少なく、資金繰りに課題を抱えやすい事業者が中心となっています。
売掛金の回収までに時間がかかるビジネスモデルを持つ企業や、事業拡大期で運転資金が必要な成長企業が多く利用しており、銀行融資よりも審査結果が早く出るため、急な資金需要が発生した場合の対応力が高まります。
ファクタリング会社が取り扱うのは、主に支払期日前の健全な売掛債権です。すでに商品やサービスの提供が完了し、請求書が発行されているものの、まだ入金されていない債権が対象となります。
具体的には売掛金や受取手形など、回収期日が到来していない債権が取引の中心となっています。取引先の信用度が高く、支払いの確実性が見込める債権ほど、有利な条件でファクタリングが可能です。
民法改正があった2020年以降は、将来債権(注文書ファクタリング)も取引対象となりました。発注書や契約書に基づく将来的な売上に対しても資金調達が可能になり、ファクタリングの活用範囲が拡大したのです。
ファクタリングを利用する最大の目的は、売掛金の早期現金化による資金調達と資金繰りの改善です。売掛金の回収を待たずに現金化できるため、事業に必要な運転資金をタイミングよく確保できます。
事業拡大のための資金調達手段としての役割も果たしています。新規設備の導入や従業員の増員など、成長に必要な投資を売掛金の早期現金化によって実現できるかもしれません。
債権回収会社(サービサー)は、特定金銭債権の管理や回収を専門に行う機関です。法律に基づく特別な許可を受けた事業者であり、主に不良化した債権の回収に特化しています。
債権回収会社(サービサー)のサービスを主に利用するのは、銀行や消費者金融などの金融機関です。
貸付債権の中で回収が困難となったものをサービサーに売却することで、不良債権比率を改善します。
不良債権を抱える一般企業や、自社での債権回収に苦慮している事業者も利用しているようです。専門的な回収ノウハウを持つサービサーに債権回収を委託することで、回収率の向上が見込めます。債権回収会社は法務大臣の許可を得た特別な会社であり、一般企業とは異なる法的規制の下で事業を行っているのが特徴です。
債権回収会社(サービサー)が取り扱うのは、主に特定金銭債権と呼ばれる債権です。債権管理回収業に関する特別措置法で定められた特定の債権のみを扱うことができます。
支払期日を過ぎた不良債権や、通常の回収手段では回収が困難と判断された債権が対象で、貸し倒れの危険性が高い債権や、すでに貸し倒れとなった債権も含まれます。
金融機関の貸付債権やリース債権、クレジット債権など幅広い債権が含まれますが、いずれも回収が滞っているか困難と判断されたものです。一般の債権回収と比べて専門的な回収方法が求められます。
債権回収会社(サービサー)の主な利用目的は、回収困難となった不良債権の処理です。通常の督促や交渉では回収が見込めない債権について、専門知識を持つサービサーに回収を委託します。金融機関にとっては不良債権処理を通じて財務の健全性を高めることが重要な目的です。
また、企業の売掛金や貸付金の回収支援を行うことで、資金回収のスピードアップと回収率の向上に貢献します。法的手続きを含む専門的な回収方法により、通常では回収困難な債権からも一定の回収が可能です。
ファクタリング会社と債権回収会社は、どちらも債権に関わる金融サービスを提供しますが、業務内容や取り扱う債権の性質に基本的な違いがあります。ファクタリングは資金調達手段として、債権回収会社は不良債権処理の専門機関として、それぞれ異なる役割を果たしています。
以下の表は両者の主な違いを要約したものです。債権の状態や目的、法的位置づけなど、多くの面で対照的な特徴を持つことがわかります。
ファクタリング会社 | 債権回収会社(サービサー) | |
---|---|---|
目的 | 売掛金の早期現金化、企業の資金調達、売掛金回収リスク軽減 | 債権回収、不良債権処理 |
対象債権 | 主に期日未到来の売掛金債権 | 支払期日超過の不良債権、特定金銭債権など |
利用主体 | 中小企業、個人事業主 | 金融機関、クレジットカード会社、保証会社など |
契約形態 | 主に売買契約(売掛債権譲渡) | 主に委託契約(債権回収委託) |
手数料・費用 | 売掛金譲渡手数料(ファクタリング手数料)など | 回収成功報酬、事務手数料など |
回収方法 | 請求、交渉、訴訟など | 請求、交渉、訪問、訴訟など |
法的規制 | ファクタリング会社が貸金業登録をおこなっていない場合、貸金業法は原則適用外(ただし、実質的に金銭貸付とみなされる場合は適用される可能性あり)、債権譲渡に関する法規制(民法など) | 債権回収業務に関する法規制(サービサー法) |
ファクタリング会社が対象とするのは主に支払期日前の健全な売掛債権であるのに対し、債権回収会社は支払期日を過ぎた不良債権を取り扱います。時間軸で見ると、ファクタリングは将来回収予定の債権、債権回収会社は過去に回収すべきだった債権という違いです。
ファクタリングは貸倒リスクの少ない優良債権を対象とするため、買取価格も債権額に近い水準となります。一方、債権回収会社が扱う債権は回収困難なものが多く、買取価格は債権額を大きく下回るのが一般的です。
ファクタリングは主に売掛債権に限定されるのに対し、債権回収会社は特定金銭債権全般を取り扱うことができます。対象となる債権の種類と範囲に大きな違いが見られます。
ファクタリングの主な目的は資金調達と資金繰り改善ですが、債権回収会社は不良債権の処理が主目的です。ファクタリングは事業継続や成長のための積極的な目的があるのに対し、債権回収会社は問題解決のための消極的な目的が中心です。
ファクタリングは売掛金の早期現金化を通じて事業拡大を支援する一方、債権回収会社は焦げ付いた債権の回収に注力します。事業フェーズで言えば、成長期と再生期という異なるステージに対応するサービスといえるでしょう。
ファクタリングは企業の成長を支援する金融サービスである一方、債権回収会社は金融機関の財務健全性向上に寄与します。経済全体から見ると、ファクタリングは資金循環の促進、債権回収会社は不良債権の処理という異なる役割を担っているのです。
一般的なファクタリング会社は特定の免許や資格が不要ですが、手形割引や償還請求権ありのファクタリングを行う場合には、貸金業登録が必要な場合もあります。一方、債権回収会社は法務大臣の許可が必須です。
ファクタリングは債権譲渡の形で行われるのに対し、債権回収会社は債権管理回収業に関する特別措置法に基づいて業務を行います。法的な位置づけと規制の厳しさに大きな違いがあると理解しましょう。
ファクタリングは売掛債権の買取に特化していますが、債権回収会社は債権回収の専門的な手法を用いて幅広い債権を扱えます。法的手続きを含む強制執行なども可能であり、より強力な債権回収手段を持つ点が異なるのです。
ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)は、一見似た業務を行う金融サービスですが、取り扱う債権の性質や目的に違いがあります。ファクタリングは健全な売掛債権の早期現金化による資金調達が目的であるのに対し、債権回収会社は不良債権の回収・処理に特化しています。
事業者にとって両者は資金調達と債権管理という異なるニーズに対応するものであり、事業フェーズや資金需要に応じて適切なサービスを選択することが大切です。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。