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建設業界における資金繰りは、多くの経営者が抱える大きな課題といえます。材料費や外注費の先行支払いに対し、工事代金の入金は大幅に遅れるという業界特有の構造が、日々の経営を圧迫しているのです。今回は、建設業の資金繰りについて詳しく解説します。
建設業で経営する上で、多くの資金を前払いし、入金は工事完了後というビジネスモデルが経営者の頭痛の種となっています。建設業特有の構造的な課題を理解し、適切な対策を講じることが、経営を安定させるためには必要です。
建設業の資金繰りを難しくしている最大の要因は、支払いが先行し入金が遅れる構造にあります。材料費や外注費、仮事務所の設置費用、足場設置など様々な経費を工事開始時点で支払わなければなりません。
工事代金は完成した後で初めて請求可能となり、実際の入金までさらに時間がかかります。先行して出費した資金の回収までに長い期間が生じるため、資金繰りは必然的に悪化しやすいのが建設業の特徴です。
また、工事を受注してから入金されるまでの期間は平均で3か月半と言われています。場合によっては半年以上かかるケースも珍しくありません。経営者は常に資金繰りと向き合い続ける必要があるのです。
建設業は他業種と比べて工期が長いことも特徴です。工事が完成するまでに数か月、場合によっては年単位の時間がかかります。前払金などの入金がなければ、完成まで資金繰りは厳しい状況が続いてしまうのです。
工事の規模や期間によって、必要となる運転資金も大きく変動します。特に着工時には資材の購入費用や人件費など、まとまった金額の支出が必要となります。工事が進むにつれて発生する追加費用にも対応しなければなりません。
また、工事代金の支払いサイトは通常60日から90日と長期間に設定されることが一般的です。複数の工事を同時に進行させる場合には、より多くの運転資金が必要となり、資金繰りへの負担が増大してしまうのです。
建設業界では未だに手形取引の慣習が残っています。通常の売掛金取引と比較して入金サイトはさらに長くなる傾向にあります。資金の回収が遅れることで、日々の支払いに充てる現金の確保が難しいのが実情です。
建設業は先行する支払いが多く、利益を出せていない企業は銀行融資の審査に通りにくくなってしまうのです。財務状況の悪化により、融資の可能性が閉ざされるという悪循環に陥りやすい傾向があります。
金融機関としても、融資したとして返済が滞る可能性を考慮します。そのため銀行は建設業者に対して融資の審査基準を厳しく設定する傾向があり、必要な時に資金調達ができないことが、資金繰りを苦しくする原因の1つです。
資金繰りの改善には、経営体質の強化と計画的な資金管理が欠かせません。原価管理の徹底から始め、綿密な資金繰り表の作成、キャッシュフロー計算書の活用まで、効果的な改善策を実践することで、安定した経営基盤を築くことができるでしょう。
資金繰りが難しい根本的な理由として、受注した工事で利益が出るかどうか、原価管理ができていない会社が多いことが挙げられます。売上高だけを見て経営判断をしている企業は少なくありません。
売上を上げるために赤字になる案件を受注しているケースが多く見られます。しかし、赤字案件が増えれば確実に資金繰りは圧迫されます。工事を完了させるほど資金が減少していく状態では、健全な経営は望めません。
受注の前に工事原価の管理をしっかり行い、利益が出ない案件に関しては断る勇気を持つことが資金繰り改善には大切です。適正な利益を確保できる案件のみを選別して受注することで、資金繰りの改善につながります。
資金繰り表は将来の収支を予測し、資金不足を事前に把握するためにも重要です。建設業では、特に入出金のタイミングにズレが生じやすいため、綿密な資金計画が欠かせません。
工事ごとの入金予定と支出予定を、少なくとも6ヶ月先まで詳細に記載することが重要です。予測される資金不足に対して、前もって対策を講じることができれば、突発的な資金ショートを防ぐことができます。
季節要因による売上の変動や年度末の工事集中など、建設業特有の資金需要の波も考慮に入れた資金計画を立てることを意識しましょう。資金繰り表を定期的に更新し、常に最新の状況を把握することで、より効果的な資金管理が可能になります。
キャッシュフロー計算書は、一定期間の現金の流れを詳細に記録する財務諸表です。建設業特有の不規則な資金の流れを正確に把握することができ、経営判断の精度を高められるでしょう。
キャッシュフロー計算書は営業CF、投資CF、財務CFの3つの要素で構成されています。事業から得た収入がどのように使われているのかを細かく把握できるため、資金の流れに問題がないか確認することが可能です。
例えば、プラスの営業CFであれば事業運営が健全と判断できます。適切な調整を加えることで資金繰りの改善が可能です。数字で現状を把握することが、的確な経営判断につながります。
建設業の資金調達には複数の選択肢があります。
日本政策金融公庫の融資、信用保証協会の保証制度、ファクタリングなど、それぞれの特徴を理解し、自社の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。
建設業の資金調達で活用したいのが「日本政策金融公庫」の融資です。民間の銀行から融資を受けられない場合も借入れできる制度があり、建設業者にとって心強い味方となります。
例えば、日本政策金融公庫の「新規開業資金」は返済期間が長いことが特徴です。設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は原則10年以内(うち据置期間5年以内)と長期返済が可能です。月々の返済負担を抑えられるため、資金繰りの改善につながります。
申請から融資実行までのスピードが速いことも魅力です。1ヶ月半ほどで融資が実行されるため、迅速に資金調達ができます。急な資金需要にも対応しやすく、建設業の資金繰り改善に大きく貢献します。
建設業の資金調達で活用したいもう一つの方法が「信用保証付き融資」です。ある程度事業が軌道に乗ってきた段階で追加融資を受けたいときに選びたい資金調達方法として注目されています。
民間銀行など金融機関から融資を受けたい場合において、公的機関の信用保証協会に保証してもらうことで、融資採択や融資枠の拡大を図ることができます。自社の信用力だけでは難しい融資も、保証付きであれば実現可能性が高まるでしょう。
信用保証協会に対する保証料の負担は必要となりますが、万一返済できなかったときには保証協会が借金を肩代わりするため、銀行も安心して資金を貸し付けやすくなります。結果として融資の可能性が広がり、資金繰りの改善につながるでしょう。
ファクタリングは企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却することで資金調達ができる方法です。建設業の資金不足を解消するための手段の1つとして注目されています。
ファクタリングは銀行融資と比べて審査に通りやすいことが特徴です。自社の経営状況ではなく売掛先の経営状況が審査基準となるため、赤字でも資金調達が可能です。銀行融資が難しい状況でも選択肢となり得ます。
ファクタリングは業者によって即日で現金化が可能です。建設業では必要になったタイミングですぐに現金化できることが重要であり、スピード感のある資金調達方法として好まれています。急な支払いに対応できる柔軟性は大きな魅力といえます。
建設業の資金繰りは構造的に難しい側面がありますが、適切な管理と対策により改善は可能です。工事原価の管理徹底、資金繰り表の活用、キャッシュフロー計算書の作成は基本中の基本です。
資金調達においては日本政策金融公庫、信用保証協会の活用、ファクタリングなど複数の選択肢から自社に最適な方法を選びましょう。計画的な資金管理と適切な資金調達で、安定した経営基盤を築いてください。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。