アパレル業の資金繰りが困難になる前にできること

アパレル業の資金繰りが困難になる前にできること

アパレル業界は季節変動や在庫管理、長い支払いサイトなど独特の資金繰り課題を抱えています。中小規模店舗や個人事業主が直面する現金不足に対処するには、事前の対策が不可欠です。資金繰りが悪化する前に実践できる具体的な方法と、経営を安定させるポイントを紹介します。

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アパレル業の資金繰り

アパレル業の資金繰り

アパレル業界では季節ごとの商品入れ替えや長期の債権回収期間など、業界特有の仕組みが資金繰りに大きな影響を与えます。経営者が業界構造を理解し、適切な対策をとることが経営安定化への第一歩となるでしょう。

季節変動による仕入れ資金の変動

アパレル業では季節ごとに仕入れ資金が大きく変動し、特に秋冬は原材料費が高騰する傾向があります。春夏向けの服は素材が薄く原価が安めである一方、秋冬は生地や素材が高くなり、仕入れ資金の負担が大きくなります。秋冬物の場合、同じデザインでも素材コストの差により仕入れ価格が大幅に上昇することも珍しくありません。

季節ごとの仕入れ費用の増減に対応するには、自己資金で乗り切る必要がありますが、中小企業や個人事業主にとっては簡単ではないのが現状です。事前の資金計画が不十分だと、仕入れ時期に資金不足におちいるリスクが高まります。

在庫管理の難しさ

アパレル業では品切れを防ぐために一定の在庫を保持する必要があり、これが資金繰りに影響を与えます。流行りの商品や季節ごとのセール時期に備えて在庫を用意する必要がありますが、売れ残りがあると価格を下げて販売することになり、資金繰りが悪化するかもしれません。予測を誤ると過剰在庫となり、値引き販売による利益率低下を招きます。

在庫を大量に抱えることで、仕入れに必要な資金が固定化され、売上が上がらない限り現金化されないため、資金繰りに大きな影響を与えます。過剰在庫は単なる機会損失だけでなく、保管場所の確保や管理コストも発生するため注意が必要です。

支払いサイトの長さ

アパレル業では、商品を納品した利益は売掛となり、手元にお金が入ってくるのは2か月から3か月先になることが一般的です。一方で、人件費や材料費などの経費は売掛金が回収できる前に支払わなければならず、業界の仕組みとして資金ショートが起きやすい状態といえるでしょう。月末に売上が集中する業態では、月初の資金繰りが特に厳しくなるケースも見られます。

取引先からの売掛金の回収が遅れる一方で、仕入先への支払い期日は早まっているため、資金繰りの改善が課題となっています。小規模事業者ほど交渉力に乏しく、支払いサイトの不利な条件を受け入れざるを得ないことも資金繰り悪化の一因です。

アパレル業の資金繰り対策

アパレル業の資金繰り対策

資金繰りの改善には在庫管理の最適化やリードタイムの短縮など、業務プロセスの見直しが効果的です。適切な対策を講じることで、限られた資金を効率的に活用し、経営の安定化を図ることが可能になります。

在庫回転率の向上

在庫回転率を向上させることで、資金の効率的な活用につながり、資金繰りの改善に大きく貢献します。売れ筋商品を生み出すための努力や、商品分析を通じて売上拡大を図ることが重要です。

どの商品がどの時期にどれくらい売れるか、過去のデータを分析し、適正な在庫量を把握することが求められます。

商品の販売期間を過ぎても在庫が残りそうな場合は、早めに値下げを断行し、商品をお金に変えることで売上点数を増やします。

売れ残りを抱え込むより、多少利益が下がっても早期に現金化した方が長期的な資金繰りには有利に働くことが多いです。

リードタイムの短縮

商品を発注してから店頭に入荷されるまでの期間であるリードタイムを短縮することで、平均在庫原価を抑えることができます。商品を分納で納品してもらえるよう交渉したり、新しい仕入先を開拓するなどの方法を検討するのがおすすめです。小ロットでの発注が可能な仕入先を見つけることで、在庫リスクの軽減と資金回転の向上が期待できます。

海外生産に依存する現状では難しい面もありますが、仕入先の現状を再確認し、改善の余地がないか検討してみてはいかがでしょうか。現地パートナーとの良好な関係構築により、柔軟な納品スケジュールを実現している事業者も存在します。

ファクタリングの活用

ファクタリングは、売掛債権を買い取ってもらうことで資金調達を行う方法です。つなぎ資金として利用することで、一時的な現金不足を補うことができます。銀行融資と比較して審査が迅速で、信用情報に不安がある場合でも利用できる点が魅力です。

売掛金を最短翌日で資金化できるため、経費の支払いを行えるだけでなく、きちんと利益を出すことも可能です。特に繁忙期前の仕入れ資金確保や、大口受注時の運転資金として活用する事業者が増えています。

アパレル業の開業資金の目安

アパレル業の開業資金の目安

アパレル業の開業には、実店舗かネットショップかによって必要資金が大きく異なります。開業形態に合わせた現実的な資金計画を立てることが事業成功の基盤となるでしょう。

実店舗の場合の開業資金

物件取得費(家賃50万円の物件の場合)は300~500万円程度です。敷金や礼金、保証金など初期費用がかさみます。ショップの内装工事費は200~600万円程度です。天井や壁、床などの基本工事や電気設備、空調設備などの費用が含まれます。

什器の購入費は80万円程度です。ハンガーラックや棚、照明器具、レジカウンター、試着室の設置などが必要となります。販売商品の仕入れは100~200万円程度です。シーズン初期の品揃えを確保するための仕入れ資金が必要です。

広告宣伝費は10~30万円程度。開店告知のチラシやSNS広告、オープニングイベントの費用などが含まれます。

合計金額は700~1,400万円程度となり、立地条件や店舗規模によって大きく変動します。

ネットショップの場合の開業資金

ネットショップで開業する場合は物件取得費やショップの内装工事費、什器の購入費は必要ありません。初期投資を抑えられる点が魅力です。ネットショップで開業する場合は、プラットフォーム利用料や仕入れ費用、広告宣伝費などを含めて、数十万円から数百万円の資金が必要となります。大規模なブランド構築を目指す場合には、1,000万円以上の資金が必要になることもあります。

3ヵ月分くらいの運営資金を準備しておくと安心です。売上が安定するまでの間、家賃や人件費、広告費など固定費をカバーできる資金を確保しておくことが望ましいでしょう。

アパレル業が利用できる資金調達方法

アパレル業が利用できる資金調達方法

アパレル事業の立ち上げや運営にはさまざまな資金調達方法があります。自己資金だけでなく、公的融資や補助金など複数の選択肢を検討することで、資金調達の幅が広がるでしょう。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、融資限度額が7,200万円で、担保や保証人に関しては相談の上、柔軟に対応してもらえます。創業期のアパレル事業者にとって心強い味方となるでしょう。

「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」も利用可能です。女性または35歳未満か55歳以上の方が対象で、女性経営者や若い世代の経営者が多いアパレル業では、活用価値の高い制度といえるでしょう。

補助金・助成金の活用

小規模事業者持続化補助金は、売上を得るためにかかる経費の一部を支援する補助金制度です。ホームページ制作費やカタログ作成費などに活用できます。

事業計画の作成など一定の条件がありますが、審査が通れば返済する必要はありません。融資と異なり返済義務がない点が大きなメリットです。

補助金や助成金は「立ち上げ時」から積極的に利用するのがおすすめです。開業前から情報収集を行い、申請タイミングを逃さないよう計画的に準備するとよいでしょう。

自己資金と個人借入

実際に個人でアパレルブランドを立ち上げた方の多くは自己資金で始めています。リスクを最小限に抑えた堅実な創業が可能です。1~2年位かけてお金を貯め、起業資金に充てるケースが多いです。開業までの準備期間を設けることで、事業計画の精度も高まります。

親や兄弟、友人などから資金を「個人的に借り入れて」起業資金として使用するケースもありますが、必要最低限のお金を、最も近しい関係者からのみ借りる程度にするのがよいでしょう。人間関係を損なわないよう、返済計画を明確にすることが重要です。

まとめ

アパレル業の資金繰りを安定させるためには、季節変動や在庫管理、支払いサイトなど業界特有の課題を理解することが大切です。在庫回転率の向上やリードタイムの短縮、ファクタリングの活用など具体的な対策をとることで、資金繰り悪化を未然に防ぐことができます。創業時には必要資金を現実的に見積もり、公的融資や補助金も含めた多角的な資金調達を検討することが経営の安定につながるでしょう。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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