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事業用資産を活用した資金調達方法として注目されるリースバック。オフィスビルや工場、機械設備などの事業用資産を売却しながらも継続して使用できる仕組みです。
主に中小企業の資金繰り改善に役立ちます。売却代金を受け取りつつ事業継続が可能な点が特徴で、ファクタリングなど他の資金調達手段と併用することで経営安定化に寄与してくれるでしょう。今回は、リースバックの活用とファクタリングとの違いについて解説します。
事業用資産を活用した資金調達法であるリースバックは、中小企業や個人事業主が保有する不動産や機械設備などを売却し、同時に賃貸借契約を結ぶことで事業継続を図ることです。
事業用資産の売却によって所有権はリース会社へ移りますが、賃貸借契約を結ぶことで引き続き同じ資産を使用できます。
売却代金を一括で受け取りながら、賃料を支払って事業を継続できる仕組みがリースバックの最大の魅力です。短期間で多額の資金を調達しながらも、事業継続に必要な資産は手元に残すことが可能となります。
リースバックの際の賃貸借契約は、普通借家契約と定期借家契約から選択でき、賃料や契約期間を調整可能です。契約内容によって将来的な経営戦略に合わせた柔軟な対応が可能となり、事業計画に応じた契約形態を選べる利点があります。
オフィス、工場、倉庫などの不動産から製造機械や設備機器まで事業用資産全般が対象です。リース会社によって対象資産の範囲は異なりますが、事業価値のある資産であれば幅広く検討される傾向にあります。
個人事業主の自宅兼事務所も対象になるケースがあり、幅広い事業者が利用可能です。居住用部分と事業用部分の割合によって、査定額が変動するため注意してください
リースバックを活用する際は、資金調達の即時性や事業継続性などのメリットと、売却価格の設定や長期的なコスト負担などのデメリットを比較検討することが重要です。契約内容を細部まで確認し、自社の経営状況に合った判断が求められます。
まとまった資金を即日~数週間で調達でき、銀行融資よりスピーディです。事業用資産の査定が主な審査対象となるため、企業の業績や信用情報に不安がある場合でも資金調達の可能性が広がります。
また、資産を手放さず事業を継続でき、貸借対照表がシンプル化して自己資本比率が向上可能です。資産の所有と使用を分離することで、バランスシート上の負債比率改善につながり、企業価値向上に貢献します。
さらに、融資ではないため返済義務がなく、資金使途に制限がありません。
売却価格は市場価格より低めに設定される傾向があり、利回り重視の査定基準が適用されます。リース会社は投資リターンを重視するため、一般的な不動産売買と比較して6~8割程度の査定額になることが一般的です。
また、リース料(家賃相当額)が想定以上に高くなる場合があり、長期的負担に注意しましょう。売却価格に対する利回りが年間10~15%程度に設定されるケースが多く、月々の支出増加を事前に試算しておくことが大切です。
さらに、契約期間が2年程度に制限される場合が多く、更新条件や契約満了後の扱いを確認しなければなりません。
賃料設定の根拠や契約期間、保証金・敷金の有無など費用構造を事前に確認します。契約書に明記されている費用項目を精査し、想定外の支出が発生しないよう細心の注意を払ってください。
また、更新料や仲介手数料など追加費用が発生する可能性があるため、細部まで契約書を精査する必要があります。特に中途解約時のペナルティや原状回復義務の範囲について、事前に明確な合意を形成しておくことが後々のトラブル防止につながるでしょう。
リースバックは、急な資金需要への対応や設備投資負担の軽減、財務体質改善などの目的に適しており、経営状況や事業計画に合わせた活用が可能です。
銀行融資の審査が長期化する際、資産査定中心の手続きで数日~数週間で資金化が可能です。金融機関の審査では業績や返済能力が重視されますが、リースバックでは対象資産の価値が主な判断基準となるため、迅速な資金調達が実現します。
業績不振や信用情報に不安があっても、資産価値に基づく調達が行えるケースがあります。赤字決算や借入過多など銀行融資では不利になる条件でも、価値ある事業用資産があれば資金化できる可能性が高まるでしょう。
既存設備を売却しつつリースで使用継続し、初期投資や固定資産税負担を軽減可能です。所有権がリース会社に移ることで固定資産税や保険料などの所有コストが削減され、資金効率の向上につながります。
最新機器への入れ替え時にも活用でき、設備更新コストを平準化しつつ資金繰りを安定化できます。高額な設備を一括購入せず、リースバックとリースを組み合わせることで、資金の流出を抑えながら最新の設備を取り入れることも可能です。
売却により貸借対照表から資産を除外し、自己資本比率の向上や企業価値向上を狙えます。固定資産の減少と現金の増加によって財務指標が改善され、金融機関や取引先からの評価向上につながる可能性があります。
外部所有化することで資産管理コストを削減し、経営のスリム化とキャッシュフロー改善が可能です。資産維持にかかる修繕費や管理コストなどをリース料として平準化できるため、収支予測がしやすくなるメリットがあります。
リースバックとファクタリングはいずれも融資に代わる資金調達手段ですが、対象となる資産や調達方法、返済義務の有無などに大きな違いがあります。それぞれの特性を理解し、経営状況や資金需要に応じた適切な選択をしましょう。
主な違いについては、以下の表もぜひ参考にしてください。
項目 | リースバック | ファクタリング |
---|---|---|
対象資産 | 企業が所有する不動産や設備(工場、店舗、機械など) | 企業が保有する売掛債権(売掛金、未回収の請求書) |
資金調達の仕組み | 企業が資産を売却し、売却後もリース料を支払うことで、引き続きその資産を利用する。 | 企業が売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する。 |
所有権の行方 | 買主(リースバック会社など)に移転する。企業は所有権を失う。 | ファクタリング会社に移転する。企業は売掛債権の回収権を失う。 |
資金の性質 | 売却代金としてまとまった長期資金を調達できる。 | 売掛金の早期回収として短期的な運転資金を調達できる。 |
主なメリット | 不動産や設備を売っても使い続けられる。多額の資金を一度に調達でき、資金使途は自由、固定資産税などの維持費負担がなくなる。 | スピーディーな資金調達が可能。借入ではないため、負債が増えない。担保や保証人が不要な場合が多い。 |
主なデメリット | 売却額は市場価格より低くなる傾向がある。リース料の支払いが発生する。 将来的に再購入する場合、高額になる可能性がある。 | 手数料が発生するため、売掛金全額は受け取れない。売掛先にファクタリングの利用を知られる可能性がある(3社間ファクタリングの場合)。 |
リースバックは資産売却によるキャッシュインと、賃料支払いというキャッシュアウトの管理がポイントです。一時的な大きな資金流入と継続的な家賃支出のバランスを考慮した長期的な資金計画が必要となります。
一方、ファクタリングは売掛債権を売却してキャッシュインフローを増加させ、負債を増やさない資金調達です。将来入金予定の売掛金を早期に現金化することで、一時的な資金不足を解消する即効性の高い手法として位置づけられます。
リースバックは対象資産の査定が審査の主軸で、追加担保や保証人は不要な場合が多いです。不動産や機械設備など物的資産の価値評価が中心となるため、企業の業績や信用力に左右されにくい特徴があります。
ファクタリングは売掛先企業の信用力が審査対象となり、売掛債権自体が担保代わりとなります。大手企業や公共機関向けの売掛金であれば高い評価を受けやすく、審査通過の可能性が高まるでしょう。
リースバックで得た資金は使途に制限がなく、営業資金や投資資金などさまざまな用途に自由に活用できます。売却によって得た資金は自社の所有資金となるため、事業拡大や負債整理、新規プロジェクトへの投資など、経営判断に応じた柔軟な使い方が可能です。
ファクタリングによって得られる資金も、原則として自由に使用できます。売掛債権の早期資金化によって、仕入れ資金や人件費、運転資金の補填など、資金繰りの多様な場面に対応可能です。特に2者間ファクタリングでは、取引先に通知せずに資金調達が行えるため、企業活動への影響を最小限に抑えながら、即効性のある資金確保が期待できます。
事業用資産を活用したリースバックは、中小企業が資金調達と事業継続を両立できる手法として有効です。資産を売却しながらも使用権を保持できる点が最大の特徴で、急な資金需要や設備投資負担の軽減、財務体質改善など多様な経営課題への対応が可能です。
ファクタリングが短期的な資金繰り改善に適しているのに対し、リースバックはより中長期的な視点での資金計画に役立ちます。それぞれの特性を理解し、自社の経営状況に合わせた適切な資金調達手段を選択することが重要です。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。