増加運転資金とは?増加する理由、計算方法も解説!

増加運転資金とは?増加する理由、計算方法も解説!

中小企業や個人事業主が事業を拡大させるとき、売上増加に伴い必要となる資金が増加します。事業拡大は喜ばしいことですが、資金不足になると成長の機会を逃してしまうリスクも。今回は、計画的な資金管理と調達が重要になる局面で役立つ、増加運転資金について解説しましょう。

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増加運転資金とは?

増加運転資金とは?

運転資金は事業活動を維持するために欠かせない資金です。中でも事業拡大期に発生する増加運転資金は、経営者が把握しておくべき重要な概念といえるでしょう。

増加運転資金の概要と定義

増加運転資金とは、売上拡大に伴い必要となる運転資金のことを指します。

事業が成長し売上が増加すると、仕入れの増加や在庫の確保、人員の増員などに対応するための資金が必要になるでしょう。

事業規模が拡大すれば、比例して日々の業務に必要な資金も増加します。売上が伸びることは経営にとって良い兆候ですが、それに応じた資金の準備がなければ、成長の機会を逃してしまうかもしれません。

運転資金は大きく分けて経常運転資金、減少運転資金、季節運転資金、増加運転資金の4つの種類があり、それぞれ役割が異なります。増加運転資金は事業拡大期に特に注目すべき資金といえるでしょう。

増加運転資金と他の運転資金の違い

経常運転資金は事業を維持するために必要な資金、減少運転資金は事業縮小のためにかかる資金、季節運転資金はイベントシーズンや特定の期間にかかる資金です。一方で増加運転資金には他と異なる特徴があります。

増加運転資金は売上高の増加に伴って必要になる資金であり、事業拡大や成長に直結しています。経常運転資金が通常の事業活動を支えるのに対し、増加運転資金は事業規模の拡大を支える役割を担っているのです。

設備の購入にかかる費用など突発的なものは、運転資金には分類されません。運転資金は日常的な事業活動に必要な資金を指し、設備投資などの固定資産への投資とは区別して考える必要があります。

増加運転資金が増加する理由

仕入れの増加により、需要に応じて商品や原材料を大量に仕入れる必要が生じ、仕入債務が増えることで増加運転資金が発生します。事業拡大期には仕入量が増加するため、支払いのための資金需要も高まるでしょう。

売上が伸びると、需要に迅速に対応するために在庫を増やすことが求められ、在庫の増加には保管や管理にかかるコストも含まれます。在庫を適切に確保することで機会損失を防ぎ、顧客満足度の向上につなげましょう。

販売が拡大すると、商品やサービスの代金回収までの期間が長くなり、売掛金で資金が拘束されるため、増加運転資金が必要になります。売上増加によって売掛金も比例して増えるため、資金繰りへの影響を考慮した計画を立てなければなりません。

増加運転資金の計算方法

増加運転資金の計算方法

増加運転資金を正確に把握するためには、適切な計算方法を理解し活用することが欠かせません。事業拡大に向けた資金計画を立てる上で、増加運転資金の計算は非常に重要です。

増加運転資金の基本的な計算式

増加運転資金の計算方法は「増加運転資金=(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間−買入債務回転期間)×売上増加後の1日あたりの売上高」です。

回転期間と売上高から必要な資金を算出することで、事業拡大に必要な資金の予測が可能になります。

一般的な運転資金の計算方法は「運転資金=売掛債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金・支払手形)」です。売掛金と在庫の合計から買掛金を差し引くことで、必要な運転資金が算出されます。

別の計算方法として「運転資金=(売掛債権回転期間+棚卸資産回転期間-買入債務回転期間)×月商」も使用できます。月商をベースに計算することで、より実務的な資金需要の把握が可能になるでしょう。

増加要因ごとの計算方法の違い

売掛債権が増加する場合は、売掛債権回転期間に注目して計算する必要があります。売掛金の回収期間が長くなればなるほど、その間の資金繰りに影響するため、回転期間の短縮や資金確保の対策が重要です。

在庫が増加する場合は、棚卸資産回転期間を重視した計算が必要となります。在庫の回転率が低下すると資金が滞留してしまうため、適正在庫の維持と回転率の向上が資金効率を高めるポイントとなるでしょう。

増加運転資金が増える要因によって、計算方法も異なるため、各要因に応じた適切な計算式を選ぶことが大切です。事業の特性や成長段階によって重視すべき要素が変わってくるため、状況に合わせた判断が求められます。

増加運転資金の目安と計算例

例えば、売掛債権が100万円、棚卸資産が50万円、買入債務が30万円の場合、運転資金は120万円と計算されます。

実際の数字に当てはめることで、具体的な資金需要が明確になり、計画的な資金調達が可能になるでしょう。

売上の増加率や業種によって必要な増加運転資金の目安は異なるため、個別の事業状況に合わせた計算が必要です。

製造業と小売業では資金の流れが異なりますし、成長率によっても必要資金は変動します。

適切な資金計画を立てるためには、増加運転資金を正確に計算し、事業拡大に備えるのが大切です。余裕を持った資金計画により、成長機会を確実に捉え、安定した事業拡大が実現できるでしょう。

増加運転資金が不足した場合の資金調達方法

増加運転資金が不足した場合の資金調達方法

事業拡大によって増加運転資金が必要になった場合、適切な資金調達方法を選ぶのが大切です。状況や目的に応じた最適な選択肢を検討し、円滑な事業成長をサポートしましょう。

銀行融資による増加運転資金の調達

銀行に増加運転資金の融資を申し込む際は、決算書、試算表、事業計画書、月次資金繰り表、会社案内などを準備し、審査に通過する必要があります。

金融機関は返済能力や事業の将来性を重視するため、資料の準備を入念に行いましょう。

審査で企業は「格付け」され、金利や返済期間が決定するため、有利な条件で融資を受けるためには、資料を準備し返済能力を示すことが重要です。日頃から金融機関との関係構築に努め、相談しやすい環境を整えておくと良いでしょう。

売上増加という前向きな理由による借り入れのため、金融機関側も積極的に対応してもらいやすいといえます。事業拡大のための資金調達は、金融機関にとっても魅力的な融資案件となるため、交渉がスムーズに進む可能性が高いでしょう。

公的融資制度を活用した資金調達

日本政策金融公庫は政府系金融機関の1つであり、国が100%出資・運営しているため、経済発展や中小企業の活動支援などを積極的に行っています。低金利での融資が可能なため、増加運転資金の調達先として検討するとよいでしょう。

都道府県などの自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する「制度融資」も運転資金の調達方法として有効です。地域の産業振興を目的としているため、地元企業にとって活用しやすい制度となっています。

公的融資は提出書類が多いため、準備には手間がかかることを踏まえ、余裕を持って申し込むのが必要です。

書類作成に時間を要するため、急な資金需要には対応しづらい点を考慮し、計画的に準備を進めましょう。

ファクタリングを活用した増加運転資金の確保

ファクタリングでは、売掛債権を早期現金化することができ、売掛金を減少させ、現金を増やすことができます。売掛金の回収を待たずに資金化できるため、資金繰りの改善に効果的な手段といえるでしょう。

ファクタリングは最短即日で入金可能であり、緊急性の高い資金不足にも対応できるため、増加運転資金の調達に効果的です。銀行融資と比較して審査期間が短く、急な資金需要にも対応できる点が大きな魅力といえるでしょう。

ファクタリングは負債を増やさずに現金を増やせるというメリットがあり、売掛金の回収サイトを短くすることにも有効です。

しかもバランスシート上で借り入れ金が増えないため、財務状況の健全性を保ちながら資金調達が可能になります。

まとめ

増加運転資金は事業拡大期に必要となる重要な資金です。売上増加に伴う仕入れの増加や在庫確保、売掛金の増加などによって発生するため、事前に計算して準備することが大切です。

計算方法を理解し、事業特性に合わせた資金計画を立てることで、成長機会を逃さず安定した事業拡大が可能になります。資金調達方法としては銀行融資や公的融資制度、ファクタリングなどがあり、状況に応じて最適な手段を選びましょう。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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