通帳なしでファクタリングの利用は可能?

通帳なしでファクタリングの利用は可能?

中小企業や個人事業主にとって、資金調達手段としてファクタリングサービスが注目されています。通常のファクタリングでは通帳などの資料提出が必要です。中には、「通帳なしでも利用できるのでは?」と考える経営者もいるでしょう。そこで今回は、通帳がない状態でのファクタリング利用についての実態や、リスクについて解説します。

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通帳なしでファクタリングを利用できるか?

通帳なしでファクタリングを利用できるか?

ファクタリングは売掛金を売却して資金調達する方法です。銀行融資と比較して迅速に現金化できる点が魅力といえます。取引には必要な書類があり、通帳は重要な位置を占めています。通帳なしでのファクタリング利用が実際に可能かどうかを見ていきましょう。

通帳なしでのファクタリング利用は原則不可能

ファクタリング会社は取引の審査過程で、通帳を通じて取引履歴や入金状況を確認するため、通帳なしでの利用は原則として不可能です。通帳は過去の入出金記録を示す重要な証拠となり、ファクタリング会社はこれにより取引の信頼性を判断します。

通帳は企業の財務状況や売掛金の実在性を確認する重要な書類であり、審査において必須とされています。

銀行口座の動きから事業の安定性や収益性を確認でき、売掛金の回収実績も把握できるため、審査の中心的な資料となっています。

一部の業者が通帳なしでの利用を謳っている場合がありますが、そうした業者との取引にはリスクを伴う可能性が高いと言えます。信頼性の低い業者が多く、後述するような様々な問題が発生するケースが報告されています。

通帳は単なる書類ではなく、取引の実態を客観的に示す証明書であり、健全なファクタリング取引には欠かせない要素です。通帳がない場合、取引が実際に行われたという証拠が乏しく、審査が難しくなります。

通帳が必要な理由は取引の信頼性確認のため

通帳は取引先からの入金記録や支払いの状況など、企業活動の実態を裏付ける情報が記録されています。ファクタリング会社にとって貴重な判断材料の1つです。

ファクタリング会社は通帳を確認することで、売掛金の実在性や回収可能性を判断します。過去に同様の取引があったか、取引先からの入金が定期的に行われているかなどを確認し、売掛金の信頼性を評価します。

また、通帳の確認により、不正や架空取引のリスクを軽減し、健全な取引を担保することができます。実在しない売掛金や架空の取引先を対象としたファクタリングを防止する意味でも、通帳は重要な役割を果たしているのです。

さらに、財務状況の透明性を示す上でも通帳は重要です。口座残高の推移や取引の頻度から、事業の安定性や成長性を判断する材料となります。ファクタリング会社は通帳の情報を基に、適切な手数料や条件を設定します。

通帳以外に必要な書類と代替手段

通帳の他に、決算書、勘定元帳、請求書、納品書などの書類が必要です。これらの書類は売掛金の発生から回収までのプロセスを証明するもので、通帳と合わせて審査されます。

オンラインバンキングの取引履歴や、電子明細書が通帳の代替として認められる場合もあり得ます。デジタル化が進む現在、紙の通帳に代わり電子的な取引履歴が審査資料として受け入れられるケースが増えています。

また、取引先との契約書や過去の入金実績を示す資料も重要な審査材料となります。継続的な取引関係があることを証明する書類は、売掛金の信頼性を高める効果があるのです。

さらに、税務署に提出した確定申告書や所得証明書なども補完的な書類として活用できます。事業の規模や収益性を示す公的な書類は、企業の信用を裏付ける資料として有効です。

その他にも、口座履歴のPDFファイルやCSVデータなど、銀行が提供する電子データも通帳の代わりとして利用できる場合もあります。

紙の通帳がなくとも、同等の情報が含まれた電子データであれば、認められることが多いです。

通帳なしで利用できるファクタリング会社のリスク

通帳なしで利用できるファクタリング会社のリスク

通帳なしでファクタリングを提供する業者が存在する場合もあります。こうした業者との取引には様々なリスクが潜んでいます。主要なリスクについて解説します。

高金利や不透明な手数料設定のリスク

通帳なしで利用可能と謳う業者は、高金利や不透明な手数料を設定している可能性が高いです。

通常のファクタリング会社よりも厳格な審査を行わない分、リスクを金利や手数料に上乗せする傾向があります。

審査基準が緩い分、リスクに見合った高額な手数料を要求される可能性があります。一般的なファクタリングの手数料率が5〜10%程度であるのに対し、通帳なしの業者では20%以上の高率になることも珍しくありません。

また、契約書に記載されていない追加手数料が発生するケースも報告されています。当初提示された条件と異なる手数料が後から請求されるなど、不透明な取引になりがちです。

手数料の計算方法が複雑で理解しにくく設定されていることもあります。割引率、事務手数料、審査料など様々な名目で費用が発生し、実質的な負担が当初の想定を大きく上回ることもあり注意が必要です。

不正や詐欺的行為に巻き込まれるリスク

審査が甘いということは、それだけ違法な取引や不正な業者が紛れ込む余地があることを意味します。架空取引や資金洗浄などの不正に利用される可能性があり、法的リスクが高まります。知らないうちに違法行為に加担してしまい、後に法的責任を問われるケースも考えられるため、審査が甘いからといって安易に利用してはなりません。

中には、貸金業登録を受けていない違法業者や、実態のないペーパーカンパニーが運営するファクタリング会社もいるため、契約の際は注意が必要です。

また、契約内容が曖昧で、後から不利な条件を押しつけられる危険性もあります。通帳確認を省略するような業者は、他の面でも杜撰な管理体制であることが多く、契約トラブルに発展しやすいです。

なお、一度でも取引を始めると、強引な営業や追加融資の勧誘を受ける場合もあります。初回の取引で信用情報を握られ、有利な条件で融資を受けられるように見せかけて、実際には高金利の借入へと誘導されるケースも現実にはあり得ます。

事業継続に支障をきたすリスク

悪質業者のファクタリングは、緊急時の資金調達手段として利用すると、長期的な事業計画に悪影響を及ぼす可能性があります。

一時的な資金繰りは改善できても、高コストの資金調達を続けると収益性が低下し、事業の持続可能性が損なわれます。

取引先や業界内での評判に悪影響を及ぼす恐れもあります。通帳なしのファクタリングは資金繰りの苦しさを示す兆候とみなされることがあり、取引先からの信頼を失う原因にもなり得るのです。

また、短期的な資金調達が習慣化し、根本的な経営改善が進まないリスクもあります。本来であれば経営体質の改善や、売上拡大に取り組むべきところ、安易な資金調達に頼り続けることで問題の根本解決が先送りされてしまうのです。

まとめ

通帳なしでのファクタリング利用は原則として不可能です。それを可能とする業者との取引には多くのリスクが伴います。通帳は企業の財務状況や取引の実在性を証明する重要な書類であり、健全なファクタリング取引には必須です。

通帳の代わりにオンラインバンキングの取引履歴や電子明細書が認められる場合もありますが、何らかの形で銀行取引の証明は必要です。通帳なしでファクタリングを提供する業者は高金利や不透明な手数料設定、法的リスク、事業継続への悪影響など様々な問題をもたらす可能性が高いです。

資金調達の際は正規の金融機関やファクタリング会社を選び、必要な書類を適切に準備することで、将来的な事業発展の基盤を築くことが大切です。

この記事を書いた人

ファクタリングの 達人編集部のアバター

ファクタリングの 達人編集部

自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
当メディアでは企業の資金繰りに役立つ情報発信を行うとともに、中小企業向けにファクタリングのアドバイザリーサービスも提供しています。

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