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中小企業や個人事業主にとって、資金繰りは事業継続の生命線といえるでしょう。業績が好調でも資金が枯渇すれば事業継続が危ぶまれることになります。今回解説するキャッシュフロー分析は、企業の現金の流れを可視化し、経営判断に役立てる手法です。
キャッシュフロー分析は企業活動における現金の出入りを把握し、経営状態を評価する手法です。会計上の利益だけでなく実際の現金の動きに注目することで、より実態に即した経営判断が可能になるでしょう。
キャッシュフロー分析では企業内の現金の流れを把握し、収支バランスを点検できます。期間ごとの入金と出金を追跡することで、どの事業活動がどれだけの現金を生み出しているかが明らかになるのです。
また、将来の資金計画策定や資金繰りリスクの可視化にも活用可能です。今後半年から一年の間に発生する可能性がある資金不足を予測し、事前に対策を講じることができます。
さらに、損益計算書とは異なる視点で経営状態を評価するツールとしても機能します。会計上は利益を計上していても実際の現金が減少しているケースを特定できるでしょう。
黒字倒産の防止や資金ショートの回避につながります。会計上は利益を出していても、実際の現金が不足し経営破綻するリスクを減らせるのです。
金融機関評価の向上や調達条件の好転をもたらします。銀行は融資審査において企業のキャッシュフロー状況を重視します。健全なキャッシュフロー分析資料を提示できれば、融資条件の改善につながる可能性があるでしょう。
また、経営判断や投資判断の信頼性を高めてくれます。感覚や経験則だけでなく、数値に基づいた意思決定が可能になり、より合理的な経営判断ができるようになるでしょう。
まず、営業・投資・財務活動の3区分でキャッシュの増減を整理しましょう。営業活動は通常の事業運営、投資活動は設備投資や資産売却、財務活動は借入や返済など資金調達に関する活動を表します。
下段で期首・期中・期末の残高変動を確認できます。期首の現金残高に期中の増減を加減算して期末残高を算出する構造になっているのです。
間接法・直接法のいずれかで営業活動キャッシュフローを算出します。間接法は当期純利益から非現金項目を調整する方法で、中小企業では一般的です。
キャッシュフロー分析を効果的に行うためには、3つの区分それぞれの特性を理解し、適切な評価を行うことが大切です。
売掛金・在庫・買掛金の変動を調整して本業の儲けを把握します。
売上が計上されても入金が遅れる場合や、仕入れが発生しても支払いが翌月以降になる場合など、実際の現金の動きは会計上の収益・費用と一致しません。
直接法なら現金収入と支出、間接法なら当期純利益から調整して算出。直接法では顧客からの入金額や仕入先への支払額など、実際の現金の動きを集計します。
なお、営業キャッシュフローが3期間連続のマイナスは、事業の継続性が危ぶまれていることを指し示すでしょう。本業からの現金創出力が弱まっている状態で、何らかの改善策が必要です。
設備投資や有形固定資産売却など、本業外の資金移動を評価する分析です。生産設備の購入や不動産取得による支出、遊休資産の売却による収入などが該当します。
マイナスは将来への投資、プラスは資産売却の現金化を示すのです。投資キャッシュフローが継続してマイナスの場合、設備投資や事業拡大を積極的に進めている可能性があります。
投資規模が営業キャッシュフローを超過すると過剰投資の懸念が生じます。本業から生み出される現金以上の投資を続ければ、外部からの資金調達に頼らざるを得なくなるのです。
財務活動によるキャッシュフローの分析では、借入金増減・社債発行償還・配当支払などの資金調達・返済を評価します。新規借入や返済、増資や社債発行、配当金の支払いなど、資金の出入りを伴う財務活動の結果が表示されるのです。
マイナスは返済が進む健全な姿、プラスは新規調達や資本注入を示します。
財務キャッシュフローがマイナスの場合、借入金の返済が進んでいるか配当などの株主還元が行われている状態です。
ここまで分析できたら、営業・投資キャッシュフローと比較し、借入依存度や返済余力を検証しましょう。営業キャッシュフローが借入金返済を上回れば返済余力は十分ですが、下回れば財務リスクが高いということです。
営業キャッシュフロー+投資キャッシュフローで算出し、自由に使える現金力を示します。事業活動から生み出された現金から必要な投資を差し引いた残りの資金を表すため、企業が自由に使える資金の大きさを測る指標となります。
新規事業投資や借入返済、株主還元の原資を測る指標です。フリーキャッシュフローが潤沢にあれば、新規事業への投資、借入金の返済、配当増額など様々な選択肢が広がります。
ただし、マイナス時は追加調達や事業戦略の再検討が必要です。継続的にマイナスが続けば、資金繰りがいずれ破綻する恐れがあります。
キャッシュフロー分析の結果を踏まえ、具体的な経営改善に活かす方法を解説します。
売掛金回収サイクルの短縮や、買掛金支払条件の最適化が有効です。請求書の早期発行や入金催促の徹底、前払い割引の導入などで売掛金回収を早めることができます。
また、一時的な資金不足に備え、手形割引やファクタリングなどの売掛債権の流動化手段を確保しておくことが重要です。
さらに、運転資本比率の定期的モニタリングで早期に警戒体制を構築しましょう。売掛金・在庫・買掛金などの運転資本の推移を監視し、異常値が出たら速やかに対応する体制が望ましいです。
投資判断を的確に行うためには、将来の収支を具体的に予測し、それに基づいて利益性を評価することが重要です。例えば、NPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)といった投資指標を使って、プロジェクトが本当に利益を生むかどうかを見極めます。
これらの指標に加えて、将来のキャッシュフローの見通しを具体的に立てることで、より確実性の高い判断が可能になります。
また、限られた資金を有効活用するには、投資利益率(ROI)が高い案件から順に着手するのが効果的です。すべての投資を同時に行うのではなく、優先順位をつけて実行することで、キャッシュの無駄遣いを防ぎ、収益性の高い事業から効果を得られるでしょう。
負債比率や固定費負担率を踏まえた資本構成の最適化が重要です。過度な借入依存は金利負担を増加させ、キャッシュフローを圧迫します。
借換えやリファイナンスで利息負担を軽減しキャッシュフロー改善を図ることができます。金利水準の変化や自社の信用力向上のタイミングで、既存の借入金を有利な条件で借り換えることが可能です。
また、配当政策や自社株買いを含む株主還元策のバランスを検討しましょう。株主への利益還元は重要ですが、過剰な配当はキャッシュアウトを増加させます。
キャッシュフロー分析は企業の資金の流れを可視化し、経営判断に活かすための重要なツールです。単なる損益だけでなく現金の動きに着目することで、資金繰りリスクを早期に発見し対策を講じることができます。
営業・投資・財務の3区分でキャッシュフローを分析し、それぞれの特性を理解することが大切です。フリーキャッシュフローを活用すれば自由に使える資金力を把握でき、経営判断に役立てられるでしょう。
ファクタリングの 達人編集部
自らの経験に基づいた、ファクタリングや与信管理に関する豊富な実績を持ち、これまでに数百社の取引をサポート。
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